2005年度 活動方針

〈はじめに〉
来年は水俣病公式確認から50年の節目の年を迎える。相思社として水俣病50年にどのように取り組むのか、今年が正念場となる。それと平行して対応が迫 られている課題も多い。一つは2007年度に予定されている評議員会設立である。相思社独自の課題ではないが、水俣市に建設が予定されている産廃処理場問 題、未救済患者問題も大きな課題である。
また、財政問題も決して解決してはいないし、経理部門の強化も数年来の課題となっている。

〈水俣病公式確認50年に向けて〉
昨年度から水俣病公式確認50年に向けての検討を続けてきた。今年度は準備期間と位置づけられるが、その活動如何が事業の正否を決定づけることになるだろ う。活動は大きく三つに分類される。①相思社の独自事業、②協働事業、③行政などへの働きかける事業に分けられる。
独自事業としては出版事業、南アフリカツアー及び海外セミナー企画、それにプレイベントとしてユージン&鬼塚写真展を計画している。
協働事業としては「環不知火海フィールドミュージアム構想」や「水俣原則の作成」などを計画している。
相思社がめざす「水俣病を伝える」こと、「水俣病の経験を活かして地域づくり」にとって、この50年事業は大きな一歩につながる可能性もあるが、逆に対応を誤れば機会を失うことにもなる。

〈アドバイザー委員会と評議委員会設立〉
アドバイザー委員会の任期は2年であり、第1期アドバイザー委員会は2004年度末を以て任期が終了した。今年度は第2期アドバイザー委員会の出発の年となるが、2007年度の評議員会設置に向けて最後のそして重要なアドバイザー委員会となる。
評議員会設立へ向けての課題整理を含めて、第2期委員会の果たすべき役割の検討と委員の選出を急がねばならない。
なお、アドバイザー委員会における検討事項としては、①旧生活学校用地及び湯の児台地活用について、②財政健全化の中長期計画作成などを考えている。

〈産廃処理場建設問題〉
水俣市に建設が予定されている産業廃棄物処理場の問題は水俣病や相思社とも関わる問題であり、水俣市の住民にとっては安賃闘争の再来とも言えるような町を 二分しかねない大問題となっている。対応を誤れば「水俣病の経験を活かしたまちづくり」も10年以上続けてきた「もやい直し」運動も水泡に帰す危険性をは らんでいる。これまでの活動が本物であるのか否かが問われている。相思社にとっても、地域にその存在をアピールするチャンスでもあり、逆に再び地域から乖 離する危険性も大きい。
相思社の果たすべき役割は何であるのか、この理事会で充分に討議し、相思社としての方針を定める必要があるだろう。

〈未救済患者問題について〉
昨年10月の最高裁判決以降認定申請者が急増している。4月7日に環境省が「水俣病対策」を発表したが、外部には反発する声も多く、また、一部の患者団体は新たな「裁判闘争」を念頭に置き、活動を開始している。
1995年の政府解決策においても救済されなかった被害者が多数存在することが明らかとなった。相思社は患者運動支援から「患者とのつきあい」へと方針 を変更したが、患者とのつきあいの延長として、また地域づくり=水俣病及び水俣病患者への偏見差別の解消に向けて、新規認定申請者及び医療事業への申請の 手伝いをするだけではなく、これを良い機会と捉え水俣病への理解を広める活動を行うべきだろう。

〈財政問題〉
ここ2年はわずかながら黒字決算とはなっているが、永年の懸案である財政問題も解決してはいない。行政からの請負事業や助成事業による収益は実質的に全 収益の三分の一に達している。維持会費及び寄付金収入は五分の一程度であり、事業収入への依存から脱却できないでいる。特効薬があるわけではないが、財政 健全化のために中長期の見通しを立てる必要があるだろう。

〈新規職員採用について〉
昨年度、経理上の大問題が発覚した。多額の不明少金や未収金が見つかり、経理部門の強化が最重要課題の一つとして浮上した。今年度は応急措置として一時 的に資料担当職員を経理担当に充てることとした。しかし、これはあくまで臨時的措置であり、恒久的な経理部門の強化とはならない。
①NGOの活動に理解があり、②経理に明るく、③パソコンに精通した職員を早急に採用する必要がある。じっくりと人物を見極めながら三つの条件を満たす 新規職員を見つけていきたい。ハローワークには頼らず、口コミとインターネット及びごんずい誌上における公募によって募集したい。

〈インターネット活用事業について〉
インターネット社会は更に拡がりを増している。今年度は地球環境基金助成により、数年来の懸案であった「データベース公開事業」と「子供向けホームペー ジの作成事業」を行いたい。この事業によって、「水俣病を伝える」事と同時に、相思社所蔵資料の活用につなげたい。

〈考証館展示の改訂について〉
昨年度、開館以降初めて展示コンセプトの変更を行った。水俣病の現在、相思社の今を伝えるために、2003年度からスタッフで検討を開始した。検討開始 から一年を経てようやく展示改訂作業を開始した。時間不足のため改訂作業の一部を今年度に持ち越すこととなったが、夏休み前までには掲示壁の設置及び展示 パネルの新規作成を行いたい。

〈湯の児台地と生活学校用地について〉
これも永年の懸案となっている。今年度は湯の児台地に足を運ぶことから始めて、じっくりと時間をかけて検討を続けたいと思っている。

〈2005年度新規事業及び検討事項〉
(1)水俣病公式確認50年事業
①塩田武史写真集出版
②海外(南アフリカ)ツアー及びセミナーの予備調査
③フィールドミュージアム構想の進展に向けて
④「水俣原則」構築に向けて
⑤ユージン・スミス&鬼塚巌写真展(プレイベント)開催
(2)第2期アドバイザー委員会の役割の検討と委員の選出
(3)産廃処理場建設問題の検討
(4)経理担当新規職員募集
(5)考証館入館料無料の範囲の拡大
(6)相思社宿泊料の改定
(7)地域維持会員制度及び学生維持会員制度の開始並びに維持会員特典の変更
(8)建物補修積み立ての開始と生活学校債権積立、車両購入積み立ての休止
(9)エコ水俣からの脱会について

コメントは停止中です。