2004年度 活動報告

(はじめに)
2004年度は相思社設立から30年目の節目の年であった。設立30周年事業に向けて、2003年度の初めから事業の検討を開始し、30周年を単に通過点として考えるのではなく、30年の活動を総括し、今後につなぐものとして位置づけてきた。
5月の理事会後は30周年事業に力を注ぎ、計画していた記念誌、記録誌、記念グッズはイベントまでにできあがった。30周年事業自体に関しては及第点を得られたと評価している。しかし一方では30周年事業に力を集中したことによって、その他の業務に支障を来した部分もあった。
8月には新作能不知火が開催された。相思社の自主事業ではないものの、水俣病50年につながるものとして位置づけ、相思社としては自主事業に準じたものとして力を注いだ。能の開催は1300人もの人々が参加者するなど、大成功裏に終わることができた。
2003年度に発足した「アドバイザー委員会」も2年目となり、委員会を3回開催した。
2004年度は新人を2人採用し活動の活性化を図り、概ね予想した結果は得られた。
10月に水俣病関西訴訟の最高裁判決があり、22年に及んだ訴訟もようやく決着がついた。一部ではあるが行政責任が認められた。この判決に関連して認定申請者が急増し、判決後半年で1500人が認定申請するという状況が生まれた。患者連合ら既存の患者団体の動きが活発化しただけではなく、新しい患者団体も生まれ、行政はそれらの動きへの対応に苦慮している。
5月の会計監査において不明朗な会計処理が発覚し、改善するよう指摘された。その後、会計帳簿等を詳細に点検し、多くの問題点が発見された。責任者の処罰と共に再発防止のためのシステム改善等を行った。

(相思社設立30周年事業)
相思社設立30周年事業は、単に記念イベントとするのではなく、「相思社の30年を総括し、これからの水俣病と水俣、そして相思社をどのようにイメージするのか」を課題としてきた。その意味から記録誌と記念誌に力を集中してきた。その結果、現時点で残しておくべき議論や運動の経過を整理できたと考えている。
一方、シンポジウムは方向性が定まらないまま担当者が二転三転した。これはスタッフ間のコンセプトが統一されていないことも原因であった。また、広報・宣伝の遅れと不足も見られた。そのためもあり、シンポジウム、交流会、ツアーの参加者が少なくなったことは残念であった。相思社の力量以上に多くの事業を計画しすぎたことが大きな原因であったと思われる。今後は今回の経験を活かし、身の丈にあった企画を立てるようにしたい。

(水俣病公式確認50年事業)
2006年は水俣病公式確認から50年目という大きな節目の年である。水俣病の50年を目先の課題解決だけではなく、日本の歴史の中にどう位置づけるか、地域における水俣病、患者の生活にどう活かしていくのか等々、広く長い視点で考えていく必要がある。
相思社では6月のスタッフ会議において50年事業に向けての検討を開始した。7月に入り、熊本県の呼びかけにより「水俣病公式確認50年についての意見交換会」が始まった。患者連合事務局という立場で参加し、スタッフ会議の議論を伝えるなど、常に議論をリードしてきた。
また、連合ら患者三団体の統一申入書の中で環境省、熊本県などの行政に対して50年事業に取り組むよう申し入れた。

(水俣病関西訴訟最高裁判決)
2004年10月15日には関西訴訟上告審において行政の責任を認め、病像論においても概ね原告側の主張を認めるという歴史的な判決が下された。この判決は原告以上に被害地域住民に大きな影響をもたらすこととなった。
半年で1500人もの人々だが認定申請し、特に100名以上の人々が保健手帳を返上して認定申請に踏み切っている。この事実は1995年政府解決策が「最終全面解決」ではなかったことを示している。
この判決を受けて原告団や既存の患者団体が行政に対して、謝罪や医療救済の要求を突きつけた。新たに救済を求める人々は新しい患者団体を組織し、行政に対し、1995年の医療事業の再開などを要求している。
相思社へも救済を求める人々からの相談が急増している。現在、すでに御所浦地区を中心に約80人の認定申請のお手伝いをしている。

(アドバイザー委員会)
アドバイザー委員会も設置から2年目となった。2004年度には6月(通算第3回)と8月(第4回)に連続して委員会を開催した。年が明けて2月には「水俣病公式確認50年事業の検討」を議題とし、理事・役員にも参加を呼びかけ「拡大アドバイザー委員会」(第5回)を開催した。
第1期アドバイザー委員会の任期は2005年3月までとなっており、2005年度から第2期のアドバイザー委員会が始まる。熊本県からの指導もあり2007年度には評議員会を設置することになっており、第2期アドバイザー委員会は評議員会設置に向けて具体的な方向性を定める必要があるだろう。

(相思社経理について)
2004年度の会計監査によって多額の不明少金が発覚した。また10月になり更に多額の長期未収金の存在が判明した。すでに個別の対応を行い、秋の理事会に報告すると共に再発防止策を提案し、承認され、実施している。
このような事態は相思社30年の歴史の中でも例を見ないことであり、単に不祥事では済まされないと思われる。設立当初の運営の難しさとは種類が異なる困難が生まれていることに心する必要がある。特に、経理については厳密なチェック体制が必要になっている。

(熊本県の立ち入り調査)
熊本県の立ち入り調査は2001年度に始まり、3年に一度ということで2004年12月に二度目の立ち入り調査があった。総体的な評価としては「大きな問題はなく、合格点以上のものである」であったが、それでもいくつか「改善すべき」との指摘がなされた。すでに一部は改善を済ませたものもある。ただ一点、「評議員会の設置に向けては具体的なスケジュールを示せ」との文書による改善命令が届けられた。それに対し「2007年度には評議員会を設置する」と文書で回答した。
その他の問題については「緊急的なものではない」との指摘もあり、必要に応じて改善していく予定である。

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