2005年度 活動総括報告

2006年5月28日・理事会

〈はじめに〉
2006年は水俣病公式確認から50年の節目の年となる。2005年度は水俣病50年事業に向けて本格的に活動を開始する予定であった。しかし、 2004年10月の関西訴訟最高裁判決を契機としてクローズアップされた水俣病未救済患者問題と水俣市木臼野に建設が予定されている産廃処分場問題が相思 社にとっても大きな課題となった。その影響は大きく、50年事業に力を注げない状況に至った。
そんな中においても『ユージン・スミス写真展』と『鬼塚巌写真・映像展』が開催できたことは特筆に値するだろう。
第二期アドバイザー委員会も発足した。今期は2007年度に予定されている評議員会設置につなぐという意味でも重要であり、委員を増員した。また、アド バイザー委員会は永年の懸案である財政問題と湯の児及び旧生活学校用地の活用という二つの大きな課題に取り組むことになっている。
2005年度はここ数年来課題となっていた経理・庶務部門の問題は職員の配置転換によって大幅に改善された。

〈水俣病公式確認50年に向けて〉
昨年度から水俣病公式確認50年に向けて検討を続け、当初は2006度の最大課題と位置づけてきたが、水俣産廃問題と未救済患者問題に多くの時間が必要と なり、十分には取り組めていない。その中でも、プレ事業として位置づけていたユージン・スミス写真展及び鬼塚巌展については水俣・芦北地域振興基金助成を 得て、それぞれ1月及び2月に開催した。

〈アドバイザー委員会と評議員会設置〉
2004年度末において、第一期アドバイザー委員の任期が終了し、2005年度から第二期アドバイザー委員会が出発した。第二期アドバイザー委員には第 一期の方々(10名、内1名は体調不良のために辞退)に加えて、主に地元の4名の方々に就任をお願いし、委員は13名となった。
2005年度の委員会開催は1回に止まった。また、評議員会設置についての具体的な議論はできず、2006年度に持ち越しとなった。

〈産廃処分場建設問題〉
水俣産廃処分場問題は水俣にとってゆゆしき問題となっている。春の理事会の決定に沿って、理事長とスタッフによって声明文の検討・作成を行った。その後、持ち回り理事会において承認され、機関誌及びホームページにおいて声明を発表した。
また、相思社全体、スタッフ全員が取り組むべき問題として位置づけ、担当を置くことにした。その後は担当を中心として取り組みを行っている。
理事の中から「声明発表だけではなく、もっと具体的な対応策を」という意見があり、IWD東亜、水俣市、熊本県、環境省に公開質問状や要求書などを送付した。
江口水俣市長は「産廃容認」とも取れる発言を繰り返し、産廃反対の意思を示す多くの市民の反発を買った。2006年2月の市長選において、「産廃絶対反 対」を唱えた宮本勝彬氏が多くの市民の賛同を得て当選した。市長の交代によって産廃建設が中止するわけではないが、反対派市民は大いに勇気づけられた。

〈未救済患者問題〉
2004年10月の関西訴訟最高裁判決以降、認定申請者が急増し3,800名を越えた。環境省は2005年4月に新たな対策案を発表したが不十分だとし て未救済患者の反発がみられた。2005年10月には水俣病対策・保健手帳の受け付けが再開された。その直前には新たな国賠訴訟も提起され、現在までに原 告数は1,000人を超えている。一方、「医療費だけでも」といった患者の声も多く、再開された保健手帳に2,000人以上が申請している。
相思社には毎日のように認定申請や保健手帳申請の相談がある。「患者とのつきあい」重視ということもあり、ていねいな対応を心がけており、多くの患者の 人たちに喜ばれている。今まで水俣病や相思社を避けていた人々が、相思社を訪れ、水俣病に向き合うようになったことは画期的である。しかし、対応には多大 な時間が必要であり、他の業務に支障をきたした面もあった。

〈財政問題〉
ここ数年はその時々の収入増もあり、単年度では黒字を計上しているが決して安定した財政状況とは言えない。
維持会費・寄付を収入の柱にするためにいろいろと模索を続けてきた。2005年度には地域の人々や学生にも入会しやすいように「協力会員」、「応援会員」 の制度を設けた。この事によって新たに会員になる人も増えたが、逆に維持会員から移行した人もあり、結果としては収入減になってしまった。結論を出すのは 早計かも知れないが会費・寄付を収入の大黒柱にするのは当面は難しいだろう。
財政問題は永年大きな課題としてきたが、2005年度も他の業務に追われたこともあり十分な取り組みが出来なかった。2006年度にはアドバイザー委員会などで課題を整理し、中長期的な見通しと対応策を検討していきたい。

〈インターネット活用事業について〉
インターネットを通じた資料検索システムは数年来の課題となっていたが、2005年度末に相思社が独自でデータベースサーバーを設置したことにより、ようやく相思社外から資料検索ができるようになった。今後は新聞記事や写真なども検索できるようにさらに充実を図りたい。

〈考証館展示の改訂について〉
考証館の展示コンセプトの改訂については、昨年度から取り組んできたが、ようやく夏に大幅な展示改訂を行うことができた。しかし、まだ不充分な点も多く、今後も担当を中心に適宜改訂作業に取り組みたい。

〈湯の児台地と生活学校用地について〉
これも永年の懸案となっている。今年度は湯の児台地に理事会やアドバイザー委員会を始め、ことあるごとに湯の児に足を運びイメージをふくらませる取り組みを始めた。今後、じっくりと時間をかけて検討を続けたい。

〈スタッフの退職と新規雇用〉
ここ数年、有能なスタッフの採用があり、業務全体がずいぶんとスムーズに動くようになった。しかし、あらたな課題の発生にともなって業務が増加し、人手 不足となっている。ベテラン職員の退職もあり、あらたなスタッフを募集しているが、条件が厳しいこともあって、まだスタッフは見つかっていない。すでに 様々な面で業務に支障をきたしているが、焦らずじっくりと条件に見あうスタッフを探していきたい。

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