「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案」の修正点(与野党協議の合意事項・2009.7.2)

与野党合意文書

※与党=自民党・公明党 野党=民主党

民主党修正資求に対する再回答(2009年7月2日)
注)番号は、民主党修正要求の番号。 Ⅰ.民主党修正要求のうち、なお協議することとして残された2つの事項について、速やかに調整を了するとの見地から、真摯に検討し、次のとおり法案を修正することとしたい。 

2.被害者範囲の拡大及び明定等(法案第5条関係)
民主党修正要求においては、救済措置の対象とする症状を法律に明文で規定するよ う求めている。この際、四肢末梢優位の感覚障害に加え、全身性の感覚障害、口周囲の触覚もしくは痛覚の感覚障害、舌の二点識別覚の障害、求心性視野狭窄の 症状について、法文に明記し、位置づけるごととしたい。
追加した症状は、メチル水銀以外の原因でも発生しうる症状を幅広く取り入れたものであるので、これらの症状を有する者について、他にどのような条件を満 たせば、救済措置の対象となり得るのかについては、幅広く救済するとの見地に立ちつつ、今後被害者団体と協議し、救済措置の方針において丁寧に定めること とする。
なお、大脳皮質障害による知的障害等については、法案に明記しないが、今回の法案の条文では救済措置の範囲とする症状を限定していないことについて、御理解を頂きたい。

5.分社化の条件の厳格化(法案第13条関係)
「分社化より救済が優先する」との気持ちは共感するところであるので、分社化の前提である事業再編計画の環境大臣認可は、特定事業者(現チッソ)が、政府の救済措置の方針に基づく一時金の支払いに同意するまでは、行わないこととする趣旨の修正を行うこととしたい。

Ⅱ.なお、上記に加え、分社化優先との誤解が生じないよう、次の修正を行うこととしたい。
分社化後の特定事業者(現チッ ソ)は、本法案の規律を受けることから、紛争が終結しなければ、会社法上解散できないことは、民主党との協議において明らかにしたところであるが、地域の 紛争が真に解決しなければ、水俣病問題の最終解決は図られないものであり、「幕引き法」といった誤解が生じないよう、さらに法案名から「最終」の文言を削 り、また、本法案の実体的な規定についても、「最終解決」との文言から「最終」を削除し、単に「解決と修正することとした。(下記(注)参照)
併せて、前文においても、水俣病問題の解決に向けた謙虚な姿勢を明らかにすべく、所要の修正を行うこととしたい。

(注)具体的には、将来の望ましい方向として、水俣病問題の最終解決を目指すべきことを謳った前文及び第1条の最初の個所についてのみ、「最終解決」の文 言を残し、題名及び条文において、技術的個所も含め他の13箇所の「最終解決」(すなわち、法案題名、目次、第1条の2番目の個所、第3条(2箇所)、第 4条、第3章章名、第6条(3箇所)、第30条(2箇所)、附則第2条)について、単に「解決」とする。

(参考)これまでの協議で既に合意した事項
※【  】は修正において削除した文言
○民主党及び自公の実務者レベルにおいて合意した事項 ・前文において、国・県の責任とお詫びを規定
・救済の一環として、医療費の自己負担をなくす新保健手帳を条文上位置づけ
・チッソ水俣工場の現地存続の確保及び地域振興
・公的診断に加えた主治医の診断書の活用(実行上)
○6月30日の協議で合意した事項 ・前文において、水俣病は未曽有の公害であることなどの事実認識等を規定
・地域指定解除に関する規定を削除(第7条)
・排出されたメチル水銀による将来の環境汚染への備えについて、環境汚染を監視し、将来何かあれば、必要な措置を講じる旨を規定
・水俣病認定業務促進のため時限的に国に設置される審査会の設置期限については、設置期限を設けず、「当分の問」と規定
・メチル水銀の健康影響の発見に寄与できるよう、必要な調査研究を実施すること等を規定
・一時金等については、別途に協議することを了解
(以上)
【別紙修正案F】 民主党修正要求2(被害者救済の範囲) 

与党法案第5条について下記の修正を行う。

(救済措置の方針)
第 五条 政府は、関係県の意見を聴いて、過去に通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性があり、かつ四肢末梢優位の感覚障害を有する者 及び全身性の感覚障害を有する者その他の四肢末梢優位の感覚障害を有する者に準ずる者を早期に救済するため、一時金、療養費及び療養手当の支給(以下「救 済措置」という。)に関する方針を定め、公表するものとする。
2 前項の方針には、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 既に水俣病に係る補償又は救済を受けた者及び補償法第四条第二項の認定の申請、訴訟の提起その他の救済措置以外の手段により水俣病に係る損害のてん補等を受けることを希望している者を救済措置の対象としない旨
二 四肢抹消優位の感覚障害を有する者に準ずる者かどうかについて、口の周囲の触覚若しくは痛覚の感覚障害、舌の二点識別覚の障害又は求心性視野狭窄の所見を考慮するための取扱いに関する事項【を定めるとともに、】
三 費用の負担その他の必要な措置に関する事項【を定めるものとする。】

【別紙修正案G】 民主党修正要求5(分社化について) 

与党法案第9条について下記の修正を行う。

(事業再編計画)
第九条
2 環境大臣は、前項の認可の申請があった場合において、当該申請に係る特定事業者が第五条第一項の方針に基づく一時金の支給に同意しており、かつ、当該 申請に係る事業再編計画が次の各号のいずれにも適合するものであると認めるときは、前【同】項の認可をするものとする。
一 個別補償協定の将来にわたる履行及び公的支援に係る借入金債務の返済に、救済措置の開始の時点及び救済措置の対象者の確定の時点において支障が生じないと認められること。
二 特定事業者の事業所が所在する地域の経済の安定に支障を及ぼさないこと。
三 特定事業者が事業再編計画に基づいて行う事業会社の設立及び事業会社への事業譲渡その他の行為によって特定事業者の債権者に対する債務の履行に要する原資が減少しないものであること。
四 その内容が債権者の一般の利益に反するものではないこと。

【別紙修正案H】 民主党修正要求1を受けて、前文を修正することとしたが、さらに、与党法案の前文に下記の修正を行う。 

水俣湾及び水俣川並びに阿賀野川に排出されたメチル水銀により発生した水俣病は、八代海の沿岸地域及び阿賀野川の下流地域において、甚大な健康被客と環境 汚染をもたらすとともに、長年にわたり地域社会に深刻な影響を及ぼし続けた。水俣病が、今日においても未曾有の公害とされ、我が国における公害間題の原点 とされるゆえんである。
水俣病の被害に関しては、公害健康被害の補償等に関する法律の認定を受けた方々に対し補償が行われてきたが、水俣病の被害者が多大な苦痛を強いられるとともに、水俣病の被害についての無理解が生まれ、平穏な地域社会に不幸な亀裂がもたらされた。

平成十六年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決において国及び熊本県が長期間にわたって適切な対応をなすことができず、水俣病の被害の拡大を防止できなかっ たごとについて責任を認められたところであり、政府としてその責任を認め、おわびをしなければならない。これまで水俣病問題については、平成七年の政治解 決等により紛争の解決が図られてきたところであるが、平成十六年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決を機に、新たに水俣病問題をめぐって多くの方々が救済を 求めており、その解決には、長期間を要することが見込まれている。
こうした事態をこのまま看過することはできず、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく判断条件を滴たさないものの救済を必要とする方々を水俣病被害 者として受け止め、その救済を図ることとする。これにより、【地域の方々が水俣病の苦難の歴史から解放されるよう、】地域における紛争を【真に】終結さ せ、水俣病問題の最終解決を図り、環境を守り、安心して暮らしていける社会を実現すべく、この法律を制定する。

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