2006年度 活動方針

2006年5月28日・理事会

〈はじめに〉
今年は水俣病公式確認から50年の節目の年である。しかし、未救済患者問題・水俣産廃問題という外的状況に、スタッフ不足という内因が加わり、相思社としては水俣病50年事業に力を注げない状況となってしまった。
とはいえ、抱えている大きな課題に対して何らかの方向性を見いだす必要性に迫られている状況は変わっていない。
(相思社の抱えている課題)
(1)抜本的な財政改革
(2)旧生活学校・湯の児台地の活用
(3)2007年度の評議員会設置
(4)未救済患者問題への対応
(5)水俣産廃問題
(6)中長期的展望の中でのスタッフ採用と個々のスタッフの能力の向上
(7)水俣市立資料館の指定管理者制度適用に向けての検討

〈抜本的財政改革〉
長年の課題であり、常に試行錯誤しながらも未だに抜本的な改革案が打ち出されていない。1989年答申において基本的な考え方は示されている。
①寄付・会費、②運営収入、③物販等の収益の三本柱のバランスがとれていることが望ましい。しかしながら現状では事業収入における比率(物販の場合は粗利)は、①寄付・会費は16%、③の物販(みかん・りんご・茶など)は14%であり、三本柱とはほど遠い情況にある。②の運営収入(助成事業を含む)が68%を占めているが、そのうち環境省関連(国水研・地球環境基金)からの収入・収益が運営収入の50%、全収益の3分の1以上を占めている。
収益全体は徐々に増えつつあるもののバランスが悪く偏ったものとなっている。寄付・会費については近年の不景気もあり、また全体的な水俣病離れもあり急激な増加は望めない。漸減傾向に歯止めがかけられれば良しという状況である。従って今後は①物販収益を安定・拡大していくこと。②運営収入自体がバランスのとれたものにしていくこと、が求められる。以上のことから次のような方針が考えられる。
(1)寄付・会費収入は全収益の20%以上を確保する。できれば25%確保を目指す。
(2)新たな物販を開発し、全収益の30%を目指す。
(3)環境省関連の収入・収益を運営収入の50%以下、全収益の25%以下となるように他の運営収益を確保する。
その具体的な方策については今後、理事・アドバイザー委員・スタッフが一体となって考えていく必要があるだろう。今年度は財政問題をアドバイザー委員会の中心的課題として検討をお願いしたい。
(1)の会費・寄付の増加につなげるためにも各地で「水俣病の出前受業」(スタッフと患者が出かけていって水俣病の話をする)を行いたい。まず、今年度は試しに九州内で数回実施したい。また、(2)の物販収益の確保については「物販プロジェクト」を設置してスタッフで検討を開始していきたい。

〈旧生活学校・湯の児台地の活用〉
集会棟・事務棟をはじめとしてすべての建物が老朽化したり手狭になったりしている。特に考証館・受付はシロアリ被害により壁が空洞化しており抜本的な対応が迫られている。また、資料室は手狭となり使い勝手が悪く、火災に対する防備が不充分など問題点も多い。こういった課題に対する策を講じなければならない。
(1)考証館の改築、資料室の増築による対応
(2)旧生活学校または湯の児台地への移転
いずれかの方針を定めなければならない時期にきている。
(1)には少なくとも500~1,000万円の資金が必要となる。また、毎年数十万円のメンテナンスが必要となる。
(2)の移転を選択するならば、5,000万~1億円の資金が必要となる。従って、現相思社の土地を売却して生活学校に移転するか、相思社と生活学校の用地を売却して湯の児に移転するか、という事になるだろう。
しかし、もし移転を選択するとしても5~10年は現在の場所にとどまるしかないだろう。すでに考証館・受付はシロアリ被害により危険な状態となっており、今年度中にも改築工事を行いたいが資金的な問題もあり困難であろうと思われる。とはいえ遅くとも来年度中には実施すべきであり、今年度はそのための準備として建設資金を積み立てたい。

〈評議員会設置〉
予定されている評議員会設置まであと1年となった。今年度、理事会の中に「評議員会設置に向けての作業部会」を設置したい。作業部会には①評議員会の役割や権限、②定員と候補者、③寄付行為の改正などについて検討をお願いしたい。

〈未救済患者問題〉
2004年10月の関西訴訟最高裁判決以降、認定申請者の急増・審査会の機能停止・国の対応策の発表・新たな国賠訴訟の提訴・保健手帳の受け付け再開と事態は急展開を見せている。しかし、環境省の対応の不適切さもあり、未だに解決の見通しが立たない情況にある。
最高裁判決後、相思社には毎日のように認定申請や保健手帳申請の相談が続いている。「患者とのつきあい」重視という相思社の方針もあり、できる限りていねいな対応を心がけている。相思社が申請のお手伝いをした数は2006年5月までで延べ600件を超えている。そのほとんどが初めて相思社を訪れた人びとである。今まで水俣病を隠していた人びと、あるいは相思社を避けていた人々が、水俣病に向き合うようになり、相思社を訪れるようになったことは画期的である。
今しばらくは申請の相談は続くと思われるが、今後もできる限りていねいな対応を続けていきたい。

〈水俣産廃問題〉
産廃容認派の江口市長が退いたことによって当面の危機は脱することができた。しかし、産廃問題が解決したわけではない。市長選という明確な課題がなくなり、当面の課題が見えにくくなったことによる中だるみがみられる。体制の再構築が大きな課題となるが人手不足の相思社がどのような形で関わるのかは相思社自体の大きな課題でもある。

〈スタッフの構成〉
神沢が退職するとなると、残されたスタッフは50代半ば以上が2名、20代後半が3名という非常にアンバランスな構成となる。20代のスタッフは能力もあり活動的ではあるが水俣病の知識不足、経験不足は否めない。人手不足は経験・知識の不足を補う余裕を失わせている。5年後、10年後を考えると若いスタッフに経験を積んでもらうことは何より重要である。また、50代のスタッフが後継者育成に専念できる体制が必要である。そのためにも早急に有能なスタッフを見つけなければならない。できれば30代・40代のスタッフを確保したい。

〈暫定職員体制〉
スタッフ不足による業務への支障は避けられない状況にある。支障を最小限にとどめる方策を定める必要がある。スタッフ不足が解消されるまでは①パート職員の採用、②スタッフでなければならない業務以外のパート職員への移行及びシルバー人材センターへの委託、などを積極的に行うしかないだろう。

〈給与体系の見直し〉
2002年度に給与体系を抜本的に見直し、2003年度から3年間試行的に実施し、その間に問題があれば改定案を検討するとしてきた。一番懸念されたのは実質的に給与を上げることによって生じる財政赤字だったが、結果としては黒字だった。しかし、部分的には設計ミスというか計算違いもあり修正の必要がある。2006年度中に修正案を作成し、2007年度から修正を行いたい。2006年度はスタッフの業務が過重となることが予想されている。現在のシステムではそれが給与には反映されない。抜本的修正は来年度から行うとして、今年度はその移行期間という意味も含めて「暫定特別手当」を支給したい。
なお、給与体系の見直しは「職務評価委員会」で素案を作成し、秋の理事会に提出したい。

〈水俣市立水俣病資料館の指定管理者制度適用による受託について〉
懸案の水俣市立水俣病資料館と水俣病歴史考証館の協働のあり方、もしくは指定管理者制度を利用して資料館を相思社が運営すること等について、資料館と協議・研究を行っていきたい。

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