2010年度 活動方針

〈はじめに〉
昨年度はスタッフ・職員減もあり、運用に大きな支障は来さなかったものの、様々な場面で人手不足が実感された。2010年度はさらにスタッフが少なくなり、業務に支障を来している。新しいスタッフを見つけることは難しいので、当面は契約社員や臨時職員を適宜採用しながら、人手不足を補うしかないだろう。
昨年度は事業収支で約160万円の赤字決算となったが今年度は事業収支ではある程度の黒字が見込まれている。
昨年度水俣病特措法が成立し、今年度からは救済措置も開始され、補償・救済問題については峠を越えた。しかし、水俣病や患者に対する偏見・差別がなくなったわけではなく、水俣病が水俣市や環不知火海地域に受け入れられているわけではない。今後は地域や地域住民を巻き込んだ事業の企画・実施が重要となっていく。
今年度は水俣病を伝えるための統一事業体の設立を一つのテーマとして、それに関連する事業構想の基盤作りを重点事業の一つとしたい。

(地域や相思社の抱えている課題)
(1)公益法人制度改革対応
(2)水俣病を伝える統一事業体設立等、水俣病の経験を生かした地域づくり
(3)未救済患者問題への対応
(4)財政不足・人不足への対応
(5)中長期方針の確立
(6)抜本的な財政改革=財政基盤の確立
(7)旧生活学校・湯の児台地の活用

(個々の課題への対応)

(1)〈公益法人制度改革対応〉
制度改革によって、新しい財団法人としての定款を作成し、理事会・評議員会を立ち上げなければならない。2008年12月から関連法令が効力を生じて、制度改革が始まっている。2012年12月までに、新制度での公益財団法人認可を受ける手続きを終了していなければならない。熊本県での公益法人制度改革に伴う申請は、「2007年10月1日現在、南九州各県には、旧公益法人は熊本255、大分285、宮崎251、鹿児島320ありますが、2009年11月30日現在の南九州各県の移行状況は、『公益』認定0~2件、『一般』認可0件であり、移行申請状況は極めて低調です」という状況である。
春の理事会で公益財団法人もしくは一般財団法人のどちらを目指すのか、決定しなくてはならない。前者は相思社の体力には手にあまると思われる。後者はかぎりなく一般企業に近い組織だが、税制上の優遇(中二階と表現されている)があるので、相思社としては一般財団法人が適当かと思うが、理事会での決定を受けて定款作成や申請書類に手を着けていきたい。

(2)〈水俣病を伝える統一事業体設立等、水俣病の経験を生かした地域づくり〉
1993年頃から修学旅行誘致・フィールドミュージアムなど水俣病を伝える事業を提唱し、地域の有力者や行政の取り組みなどもあり一定の成果はあった。その過程で、水俣病を伝える事業の共通窓口の設置の必要性が痛感された。行政を中心として窓口設置の試みを行ってきたが、行政では窓口を設置しても有機的に機能しないことが明らかとなった。
行政を中心にすれば専従職員を配置することは容易になる反面、担当者は2,3年で代わり、結果として事業縮小、あるいは機能停止に陥ってしまう。継続して事業を行う意志と能力をもつ民間人が中心となり、行政の協力を得ながら事業を進める必要があると思われる。これは、水俣病の経験を生かした地域づくり事業全般に言えることだが、今年度は「水俣病を伝える事業」に重点を置き、「民間中心・行政協力」の「統一事業体」設立をめざしていきたい。

(3)〈未救済患者問題への対応〉
2004年の関西訴訟最高裁判決以降の状況は水俣病被害の広がりと水俣病に対する偏見・差別の実態をあらためて浮き彫りにした。
2009年7月に成立した水俣病特措法は「チッソ支援法」と揶揄されながらも実体化しつつある。2010年4月には実施に必要な閣議決定がなされ、5月1日からは救済措置への受け付けも開始された。
相思社には救済措置に関連する問い合わせなどが連日続いており、その対応に追われている。一方、救済法にはチッソ分社化・救済措置だけではなく、地域振興や絆の回復についても記されており、この条文をどのように活かしていくのかが問われている。
相思社としても救済措置に終始することなく水俣病の経験を生かした地域づくりにとってのチャンスと捉え、積極的に関与していきたい。

(4)〈財政不足・人不足への対応〉
昨年度は事業収支で実質的に約250万円の赤字予算を組まなければならない状況であったが、スタッフの努力などがあり、赤字幅は100万円ほど圧縮できた。
今年度は事業収支では多少の黒字が見込まれるようになった。しかし、中長期的に安定した財源はなく、当面はその時々で収支バランスがとれるように事業を組み立てるしかない。
また、スタッフ不足は深刻であり、当面は契約社員や臨時職員を雇用しながらスタッフ不足を補っていくしかない。スタッフ募集は継続しており、時々問い合わせはあるものの、二の足を踏む人が多く、時間をかけて有能なスタッフを探し続けるしかないだろう。

(5)〈中長期方針の確立〉
2001答申からすでに9年が過ぎ、見直しは急務となっている。昨年度理事会において、「30年後の相思社を考える作業部会(仮称)」を立ち上げる予定であったが、日常の職務に追われて立ち上げることはできなかった。
今年度はさらに業務に追われることが予測され、中長期方針を立てるのは難しい状況となっている。

(6)〈抜本的財政改革:財政基盤の確立〉
長年の懸案ではあるが、今年度の状況を見る限り具体的な検討ができる状態にはない。次年度以降に先延ばしするしかないだろう。

(7)〈旧生活学校・湯の児台地の活用〉
これも長年の課題となっているが、具体策をすぐに見いだすことは難しい。中長期方針を検討する中での一つの課題としたい。
なお、西回り自動車道の用地計画の中に旧生活学校敷地の三分の一が含まれているが、現時点では何も話は聞こえてこなかった。

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