2011年度 活動方針

<はじめに>
昨年度は水俣病特措法による救済措置受け付けが開始され、地域振興へ向けての動きも始まった。相思社はスタッフ4人という人手不足の中で特措法に振り回された一年だったと言えるだろう。
財政的には3年ぶりに黒字となった。今年度も良くも悪くも相思社の活動は水俣病特措法に左右されるだろう。
相思社は特措法以外にもいくつもの課題を抱えているが、その中でも特に大きな課題は期限が徐々に迫りつつある一般財団法人化の問題である。今年度上半期において一般財団法人認可申請に向けての作業を終え、秋の理事会の承認を経て、今年度下半期に正式に申請する予定となっている。
長年の様々な課題も一般財団法人化を見据えて考えていく必要がある。
なお、今年度はスタッフ3人、スタッフ候補1人(下半期からもう1人増員予定)、常勤パート2名の体制で運営していくことになっている。

<地域や相思社が抱えている課題>
(1)一般財団法人認可申請に向けての作業
(2)一般財団法人化以降の相思社のあり方
(3)資料室及び資料整備事業
(4)(水俣病の経験を活かした)地域づくりへの具体的対応
(5)元生活学校跡地について

(1)一般財団法人化に向けての作業について
2009年度に公益法人制度改革対応作業部会を設置し検討を重ねてきた。2010年度に「一般財団法人」化を目指す方針を打ち出し、理事会に提案し方針が承認された。作業部会では2011年度中の一般財団人認可申請を前提として様々な課題について検討を続けている。
今年度は認可申請仕上げの年であり、今年度上半期に新定款の策定、理事・評議員候補の選定、新会計基準(実施事業=公益事業とその他事業=収益事業)による予算・決算のシミュレーション、公益目的事業支出計画作成、などのより具体的な作業を行わなければならない。
今年度秋の理事会において一般財団法人認可申請の最終提案を行い、下半期に認可申請、2012年度からは一般財団法人として再出発する予定となっている。したがって今年度上半期には必要に応じて作業部会を開催し、秋の理事会までに認可申請の詳細案を作成したい。
申請には公益目的財産額の確定や公益目的支出計画の作成、新しい財務基準への対応、などの課題もあり、熊本の(株)近代経営研究所栗谷会計事務所に相談しながら作業を進めたい。
なお、新定款作成にあたっては実態と合わなくなっている「設立目的」の変更を予定している。

(2)一般財団法人認可後の相思社のあり方について
2012年度から相思社は一般財団法人として再出発する予定であり、このことを契機として一般財団法人としての相思社のあり方を検討しておく必要があるだろう。
一般財団認可後の相思社のあり方については理事会に作業部会を作ることも考えたが、公益法人作業部会の中で作業と並行して検討していく方が現実的であろうと思われる。
公益法人作業部会に「一般財団法人化以降の相思社のあり方も検討する」職務を与えるよう提案したい。
昨年度からスタッフ会議において一般財団法人認可後の相思社のあり方について検討を続けている。その中で現在の事業を点検し、消滅・縮小・維持・拡大していく事業、新規に始める事業の検討を行っている。新体制においての必要な職員数、財政計画等の検討も必要になるだろう。これは実質的には中長期の活動方針となるものであり、最終的には理事会で決定しなければならないが、スタッフ会議と公益法人制度改革対応等作業部会とで検討を続けていきたい。できれば新体制発足後の2012年度理事会において提案できるようにしたい。

(3)資料室及び資料整備について
相思社は設立以来、水俣病関連の資料収集を続けている。現在までに収集された資料は新聞記事10万点、新聞記事以外の紙資料10万点、映像資料1000点、音声資料1700点、写真資料7万点に及んでいる。現在も、毎年新聞記事資料が1500~2000点、それ以外の資料も2000~2500点増加を続けている。
1974年の相思社設立当初は資料専用の建物はなく建物の一室が資料室とされていた。資料の増加に対応して1983年には資料専用の建物が建設された。それが手狭になった1996年には資料棟の増築を行ったが、資料棟が満杯となった2008年度には既存の建物を改築し第2資料庫を設置し、当面の資料保管スペースを確保した。しかし、第2資料庫もあと1~2年で満杯になりそうな状況となっている。資料棟自体も資料の重みに耐えかねて床が沈み床下に突っ張りを設置して何とか耐えている状態となっている。また以前から指摘されているように、防火設備はなく防災の面でも危険な状態が続いている。
(提案事項)
①資料室及び資料整備についての中長期方針については1~2年の内に結論を出さないといけないと思われるので、早急に理事会作業部会で検討を開始したい。
②有償による資料データの提供等についての協議を国水研・水俣病情報センターと開始したい。

(4)(水俣病の経験を活かした)地域づくりへの具体的対応について
相思社の2001年答申においても、活動の三本柱の一つとして「水俣病の経験を活かした地域づくりに主体的に関わる」があげられており、方針に沿ってスタッフ職員が様々な形で地域づくりに関わってきた。
2009年には、問題は多々あるにせよ、水俣病特措法が成立し、2010年からは救済措置も始まっている。特措法には35条(地域の振興等)、36条(健康増進事業の実施等)、37条(調査研究)の条文があり、相思社の方針と一致する部分において、この条文を活用して既存事業の拡大や新規事業を検討するべきだろう。
2001答申の柱の一つである、「水俣病を伝える事業」は水俣環境大学構想や統一事業体構想にも深く関連するものであり、こういった事業構想にも積極的に関わっていきたい。
また、福祉・健康増進事業は介護保険制度が開始された頃から、「相思社として取り組むべきではないか」との議論があった。2002年には学習会なども始めたが、相思社の不得手な分野であり中断されたままになっている。
特措法に関連して今年度から来年度にかけて、水俣環境大学や地域福祉・健康増進の大方針が決まっていくと思われる。相思社もこういった方針作成に積極的に関わり、水俣病を伝える事業の拡大や福祉・健康増進事業を含む地域づくりに関わる新規事業に結びつけていきたい。

(5)元生活学校跡地について
元生活学校の賃貸契約は昨年度に切れ、契約を更新しないまま、実質的に賃貸を続けるという異常な事態となっている。この状況は相思社にとっては大きな精神的負担となっている。2012年度の一般財団法人認可を見据えて次のことを提案したい。
(提案事項)
①新体制となる2012年度以降のできるだけ早い時期に方針を確定する。
②新しい方針は暫定的なものではなく、恒久的なものにする。
③恒久的方策としては、「現状のまま売却する」、「更地にして売却する」、「相思社の事業の中に組み入れて積極的活用を図る」のいずれかを選択する。
④金刺氏に17年間に及び賃貸していた経緯もあるので、「金刺氏への売却」を最優先で協議する。
⑤課題の円満解決を図るために金刺氏関係者の協力を求める。

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