生産者インタビュー



桜野園 松本さん

不知火海を遠く見下ろす桜野上場にある茶園。四代目の和也さん・里実さん夫婦が中心となって、お茶作りから販売までを手がけています。


2008年

静岡で生まれ、薄原に移り住み、子どもを育て、お茶を作っている里実さんにお話しを伺いました。











庭先で干しタケノコ








<薄原というところ>
最初に来た時から薄原の風景が好きでした。神社や桜の並木があって、風景が広がってて。昔の旧道や石垣に挟まれた道、川沿いの道とかを歩くのが好きですね。そこに人が花を植えたり、野菜を作ってたりしてきれいなところ。そんな里の風景がすごく好きです。

<食へのこだわり>
 基本は「素材の持ち味を楽しむ」こと。子どもがアトピーで、これはダメ、あれは食べられないというのがありました。それは制限だったけど、一生懸命やろうとすると可能性を拡げてくれました。料理法でとても変わるんです。だから「こういう風にすれば素材の味がでてきて、砂糖入れなくても、こんなに甘く美味しくできるんだ」って気づいたり。例えば野菜や果物を干すとかね。干しいもが甘いように、お日様の力を借りると甘くなるんですよね。  それではまっているのが漬物。農家だからいっぱいできる野菜があって。私はすごく飽きっぽいので、たくさん干した大根を何にしようかなって、違うものを作るのが好きなんです。漬物も炒めてみたらすごく美味しかったとか、発見が楽しいんです。料理大好き!

<菌のとりこ>
 最近は菌にも凝ってて。それまでは、紅茶を作る過程で酵素が働いてどうのこうのとかあんまりピンと来なかったんですけど、菌のことを深めていくことで、お茶にも通じるのは良かったなと思います。  じゃがいもは弱火でじっくり炒めると持っている酵素が働いて澱粉を甘みに変えるから、甘くなるんですよね。火を入れていくのは50〜60度ぐらいで、そこをゆっくり通過させることが大事だから、いきなり強火でがぁってしない。そういうことなんだぁとか。  腐っていくのと良い発酵との違いって面白くて。菌はすごい大事だなぁと思う。菌はとりこになりますよ。ぶくぶくしてきたら「すごい、すごい」っちゅう感じ。思い入れがあるんですよね。育てるのに時間もかかるし、気になる。子どもと同じようにね。  料理で面白いなって思ったのは、食感が重要な要素を占めていることです。もちもちしているとか、しゃきっとしているとか。同じ食材なのに幾通りも楽しめて、無限の可能性を感じます。干したり保存したりするとまた違う。それに四季があるし。それが薄原の暮らしの醍醐味。料理は本当に奥が深いです。

<お茶に込めた思い>
 安心安全、つまり無農薬・無化学肥料とか、肥料もなるべく少なくしているということを売りにするよりも、やっぱり美味しいと思って飲んでいただけるのが一番嬉しいし。私たちのお茶を飲んで、そこにほっとする時間が生まれたら…という思いが、私たちのお茶には込められています。



2007年 「お茶の木にも負担をかけない栽培」
 水俣川と湯出川に挟まれ、不知火海を遠く見下ろす桜野上場に、松本さんの茶園があります。1928年に和也さんのひいおじいさんが開墾、徳富蘇峰によって「桜野園」と名付けられました。今は4代目の和也さん・里実さん夫婦が中心となって取り組んでいます。今年は2人目の子どもが生まれ、ますますにぎやかになりました。

 一家の暮らしはスローライフという言葉がぴったり。畑で取れた野菜や自家製の漬け物、水俣川のカニが食卓に上ります。里実さんは子どもが小麦アレルギーだったこともあって、米を中心にした食生活を見直そうと、古文書をレシピ代わりにしているそう。

 無農薬栽培を始めたのは1990年ごろから。茶園の半分で昔からの「在来種」を、残り半分で「やぶきた」を栽培しています。旨みは「やぶきた」、香りは「在来種」とそれぞれ個性があります。今年は花粉アレルギーに効果ある品種の栽培も試みています。

 肥料も「人間が食べても大丈夫なものだけ」を使います。なたね油粕は国産のものを使用し、魚粕は鰹節の原料になるような良質のものを使っています。自然の味にこだわり、肥料をやりすぎず、お茶の木にも負担をかけない栽培を心がけています。最初に来た時から薄原の風景が好きでした。神社や桜の並という思いが、私たちのお茶には込められています。



   
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