3月11日、水俣市文化会館にて、産廃処分場を計画するIWD東亜熊本の環境アセスメント説明会が行われました。
結果は住民側の大勝利!
その模様をリポートします。
(以下は記憶に基づき再現しております。多少の記憶違いはご容赦ください)
相思社で遠藤が予定している水についての質問を復習。IWDの代わりに遠藤から怒られる。
最後の打ち合わせ。質問項目の再確認。「この準備書はとにかくなっとらん」ことを再認識する。
1000人を収容できる文化会館の入口で、「産廃阻止!水俣市民会議」(代表宮本市長)が、IWDへの説明会に関する申し入れ事項、及び今日の注意事項と予定質問事項を書いたビラを配っている。事前にIWD側に申し入れていた事項は、住民が理解し納得できるように住民側に司会をさせること、説明は1項目ずつ行うこと、質疑は一問一答式で行うこと、意味のある質問である限り必ず答えることなど。しかしIWDから配付された資料には、市民会議の申し入れを全く無視した業者本意の議事スケジュールが書かれており、「本当に住民を納得させてくれる説明会なんだろうか?」と参加者を不安にさせた。
入場すると、壇上のIWD側の司会がすでに注意事項を繰り返していた。まだ30代に見える。結構若い。(どうでもいいがヤジは「吐く」ではなく「飛ばす」だろう)。
市民が次から次へと訪れる。文化会館がガラガラだったらどうしよう、と心配していたが、蓋を開けて見れば全くの杞憂!最終的に入れなかった人も大勢いて、ロビーのモニターの前に席が用意されたようだ。
5分遅れて司会が「それでは説明会を開始させていただきます」の声。
「ちょっと待ってください!」
会場から、一人の女性が立ち上がって声を上げる。
「社長さん、今日の説明会の目的を教えてください。ただやればいいというものですか、それとも住民が納得の行く説明をするためのものですか!?」
「あとでやれ〜!!!おい!!」
とドスの聞いた声が会場から飛ぶ。複数いる。
しかし、彼女は怯まない。女は度胸だ。
「納得の行く説明会を行えるように、住民側に司会をさせてください。」
司会「今日は私たちの主催する説明会ですから、司会進行も私どもが行います。市役所とも協議した結果決まったものです。」
ん? ビラには司会を住民側にさせろと申し入れたと……。
なるほど、申し入れを拒否することを「協議」と呼ぶのか。勉強になった。
「だからヤジだヤジだと言われんだろ!退去させろ」
「オマエがヤジだろうが!」
反対派の応援の拍手と、賛成派の非難のヤジとが入り乱れ、場内は騒然となる。それ以上混乱が長引けかせるのは得策でないと見て、住民側、とりあえず一旦退き、静かにIWDの説明を聞くこととなった。
IWDの筋書き通り、社長の話と事業説明とは続く。事業説明は、コンサルのNPO法人環境技術協会が行った。処分場の必要性の話と、処分場の構造の話。2005年11月9日の説明会のようにいきなり埋立終了後にビオトープを作る話などはせずに、一応まじめに処分場の構造、遮水工や浸出水処理、貯水池などの説明をした。
業者側が事業説明を終え、アセスの説明に入った時、会場から手が上がる。
住民 「提案です。全項目一遍に説明されては忘れてしまいますから、一項目ずつ、説明と質問を交互にやりませんか?」
しかし、ここでもIWD側は頑として譲らない。
IWD 「あと15分で説明が終わりますから、聞いてください」
はぁ…?800ページの準備書の説明が15分?
アセスの説明は確かに15分で終わった。13項目あったので、1項目1〜2分の計算になるか。説明と言うより結論を話すだけ。とても住民が「理解して納得できる」説明ではない。
事業者側の説明が終わり、15分の休憩となる。
司会 「次の質問時間には、質問ボックスに入れていただいた方から抽選で……」
という司会のアナウンス。質問は受付の質問ボックスに「住所と名前」だけ書いた紙を入れさせ、抽選で質問をさせるというもの。おいおい、商店街のクジ引きじゃないんだぞ。「公平を期すため」と言っているが、そんなやり方は前代未聞である。ちなみに市民会議は事前に質問を送付しており、その質問に優先して答える話は、業者も了承済であった。しかし、そんな話はまるで無かったかのような言葉である。
休憩時間終了。
司会 「この時間は先ほど質問ボックスに住所とお名前を入れていただいた方から抽選で質問をお受けしたいと思います……」
やはり無視する気か。住民側に緊張が走る。
「……が、事前に質問をお受けした方については、お約束通り、質問を、お受け、いたします」
句読点の位置に、「やるよ、やればいいんだろ!」という声が聞こえて来そうな司会のアナウンスであった。さて、市民会議代表の質問、トップバッターは、「ごんずい」でも何回かお世話になった地元住民の下田保冨さんと相思社の遠藤。
下田 「私は、管理型処分場を計画している真下の大森集落に80有余年、あのうんまんた(馬尼田)台地を生活の糧を得る仕事場として共に生き、その台地からの大自然の恵みの湧水によって命をつなぎ、生かされ生きてきました。その生き証人として、私のこの80年の実体験をふまえて、お尋ねいたします。私の指摘した21カ所の湧水は一日500〜600トンの水が湧きます。その湧水を、準備書では沢水と書いていますが、何をもって湧水ではなく沢水としているのか、教えていただきたい」
業者側の水の担当は平林氏というちょっと気の弱そうなおじさん。とりあえず現場の写真を映して「これは湧水」「これは沢水」等々説明する。その中に下田さんの水源の写真はない。本当に現地に行ったのか怪しい?
遠藤 「今の写真の説明の意味は、地下水か沢水かの判断は、目視で行っているということですね」
平林 「そ、それ以外に何があるんですか」(あーあ、言っちゃった…)
下田 「あなたたちが沢水と言っているものが、沢水でなく湧水である証拠をお話しましょう。今から約30年前、昭和55年の夏7月から8月にかけて約二ヶ月かんかん照りで雨は一滴も降らず、世間が煙っているように見え、山の杉の木も枯れてしまいました。1〜2月に植林した杉の苗も、1本も根付かずみんな枯れてしまいました。その年にも、私たちの水源は、こんこんと湧き出て何の支障もありませんでした。更には平成12年……」
下田さんは何年の渇水の時に湧き水がどうであった、また何年にはどうであったか、大水の時はどうであったかと、仔細に例証を挙げる。おざなりの調査と紙の上だけの作文しかしていないIWD側は、現場の生き証人の語る事実にぐうの音も出ない。
下田 「ですから調査をやり直してください」
その後もいろいろやりとりがあり、IWDの図の水源のどれが下田さんの水源なのか、ボーリング調査の結果はなぜ全部出さないのか、など質問があり、悉く見当違いな答えをする平林氏。周囲(IWD側)から「お前は喋るな」という視線が飛ぶ。そうは問屋が卸さない。
遠藤「あなたが調査してるんでしょ。答えてください、平林さん」
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| 質問する遠藤 |
平林「……」
平林氏、もう頭が真っ白で何を言われているのか理解できていない風だ。しかし、何を言われても一向に動じない司会やコンサルに比べたら可愛げがある。家に帰れば優しいおじいちゃんなのかもしれないなぁ。まあ、恨むならIWDを恨んでね。
IWD 「『沢水』と書いたのは私たちが調査して書いたもので、『地下水』と書いたのは、下田さんの主張に敬意を払って……」
もう訳が分からない。
小林社長「どうもコミュニケーションが取れていないので……」
遠藤 「それは司会がちゃんと仕事をしないからでしょう。両者の論点をすりあわせて繋げるのが司会の仕事じゃないですか。司会の仕事は、“静かにしてください”と言うことだけじゃないんですよ」
会場からも、「司会交代!」の声。
IWD側は司会は譲りはしなかったものの、最初に住民が主張したとおり、IWDが司会をしたのでは一向に話が進まないことは、誰の目にも明らかだった。
すったもんだの末、業を煮やした小林景子社長が立ち上がり、
「間違ってる間違ってないというのは、みなさんホントに細かいこの数字の中で、ほんとに皆さんが内容解ってらっしゃるんでしょうか?」
場内ブーイングの嵐。
この社長の「失言」で、会場を一斉に敵に回してしまったIWD。逆に住民側の団結度は一気に高まった。
もちろん、住民側の主立ったメンバーは準備書を分担して読み込んで説明会に臨んでいる。不思議なのは壇上の方々は、本当に準備書を理解して説明会に臨んでいるのだろうか。説明会の進行にはかなり神経を尖らせているのにもかかわらず、肝心の準備書の内容については呆れるほど無防備である。
準備書は素人が見ても矛盾だらけ、専門家曰く、「本当に専門家が書いたのかどうか怪しい」という代物である。小林社長の言うとおり、住民が800ページの専門用語の前にたじろいで、中身を読むなんて思わなかったのだろうか。ましてや中身について反論されるなど、想定していなかった? この無防備さ、そうとしか考えられない。
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| 質問に答えられず、慌てて相談するIWDの面々。 一番右が小林社長、右に立っているのが平林氏。 |
さらに、遠藤が、Y-20水源が、あるページでは「沢水」と書かれ、別のページでは「地下水」と書かれていることを指摘。壇上の方々は準備書をひっくり返してアタフタアタフタ。こんな単純な質問に、いつまでたっても答えられないことに住民側は呆れ返る。
そんなIWD側を一生懸命撮影していたマスコミに対し、司会は「過度なフラッシュ撮影はご遠慮ください」と注意する。すかさずマスコミは司会をぐるりと囲んで撮り始める。
一同大爆笑。
司会 「ただいま協議しておりますので、少々お待ちください」
会場 「いつまで待たせるの〜休憩にでもしたら〜」
司会、憮然として5分間の休憩を宣言する。
トイレで順番待ちをしていたおばさんたちは、口々に「おもしろかー」の声。
さて、休憩を挟んだ長い協議の結果、IWD側は「地下水というのは書き間違いで正しくは沢水」との結論を出してきた。さらに、言うに事欠いて「ワープロの打ち間違い」などと発言する。
遠藤 「じゃあ、他にも打ち間違いがあるんですか」
IWD 「他にも、間違いがあるかもしれません。しかし、調査はちゃんと行っています。打ち間違いなどは、なくすように努力しますが完全になくせるものではなく……」
あっさり認めるなよ……(唖然)
小林社長 「語句の違いなど、細かな揚げ足取り……」
おーい、それは細かいことじゃないぞ。
遠藤 「こっちは命を賭けてやってるんだ。あんたたちは日本一完璧な施設を作ると言っておいて、準備書にこんないい加減なものを出していいと思ってるんですか? ちゃんと調査して、説明会をやり直すと約束してください!」
住民 「私たちは、きちんとした説明を聞きたいのです。今日は県の方も来ていると思います。きちんと説明会を行うように、よく指導していただきたい」
さて、協議の結果、小林社長は説明会を再度行うことを表明した。
他に、明後日13日にすべてのボーリングコアを見せること、また後日に下田さんの指摘した21の水源を再調査することも約束した。
住民はIWDのいい加減さを目の当たりにして「こんな会社に産廃を作らせてはたまらんばい」という思いを強くした。
IWDは、真っ青になって湯の児温泉で緊急会議を開いた……かどうかは定かではない。
ちなみにこの説明会で相思社の遠藤にファンができたという副産物(?)もあった。
その晩は、なんだか狐につままれたような気分で、目が覚めたらまた文化会館に座っているような気がしてならなかった。
「実は壇上にいたのはみんなそっくりさんで、本物は別の場所で説明会をすんなり終わらせていたりしたらどうしよう……」
という妄想が頭をよぎるのは、信じられないほどお粗末な説明会だったせいだろう、うん。
次回の説明会はさすがのIWDも少しは気を引き締めて臨んでくるだろう。勝って兜の緒を締めよ、である。
翌12日、住民たちは県庁を訪れた。
県のアセス担当は、昨日の説明会を会場の隅でこっそり見ていたらしい。
県 「大事な話なので説明会をやり直すのは仕方がないと思います。個人的には1回で終われば良かったと思いますが……」
個人的には? ふーん?
次は、こっそり来ないでぜひ住民にもIWDにも見えるところに居てくださいね。
(文責 高嶋 由紀子)
遠藤の感想:いまだにIWDが誤記を認めたことが信じられない。しゅりがみやまのキツネに、ケムに巻かれたような不思議な気分である。水のこと・地質のこと・設備のことなど数々の疑問を、誰にでも分かる暮らしの言葉に置き換えて、「伝える仕事」を全うしたい。IWDが「真の物質循環」を語るならば、その表現は産廃最終処分場ではなく、私たちが現在享受している暮らしの見直し=産業活動の見直しをビジネスにすることではないのか。 (遠藤 邦夫)