第四話 「月と八朔と息子の名前」 坂西 卓郎 |
意味不明なタイトルだが、一つだけ共通点がある。それは『月』。なぜなら息子の名前は朔(さく)と言う。「だからどうした」と言われそうだが、少しお付き合い下さい。
<純日本産みかん、八朔の由来>
まず『八朔』から。八朔は1860年頃に発見され、1902年に八朔という名前が与えられた。発見した広島県因島にあるお寺の住職が、旧暦の8月1日から食べられるということで八朔と名づけたらしい。8月の朔日(1日)に食べるから八朔だそうな。
ちなみに旧暦の1902年8月1日は新暦では9月2日。まだ八朔には小さな実が実り始めるぐらい。現在の八朔の食べ頃は2月〜3月。9月だとまだまだ酸っぱくて食べられないと思うが?昔は違ったのか? |
<新月の日に生まれる>
で、次は『朔』。妻は助産師さんの元で朔を出産した。自然分娩というやつ。促進剤などももちろん使わない。すると息子はちょうど新月の日に生まれた。また同じく自然分娩のお母さん達も新月の日前後に集中して出産。新月の日が過ぎるとぱったりと出産ラッシュはストップ。不思議なものだ。女性は今でも月の満ち欠けに影響されるが、男性は全くないと思う。妻は「満月の日は感情的になるし、新月の日は寂しくなる」とよく言う。そういえば昔、妻と協定を結んだことがある。「意味なくイライラする日はあるの。そういう日は反論せずに、Yesと言って」と。今思えば「月の協定」と言えるかも。また現代社会も夜まで煌々と電気がついており、月のことなどほとんど気にもとめない。そんな日常を送っていながらも、赤ちゃんはきちんと月の満ち欠けに影響されて生まれてくる。驚きと感動でいっぱいだった。人も食べ物も大いなる自然の恵みを受けて生かされている、その「のさり」に感謝したい。生まれてきてくれてありがとう。 |

朔と八朔 |
<太陰暦と太陽暦の生活>
そして『月』。息子の朔は水俣生まれ。水俣の人や風土のことも名前に込めたいと思った。農家の生活は太陽に沿っている。日の出とともに起き、日没とともに休む。ですが、漁師の人たちは月の満ち欠けで生活している。朝だろうが、夜だろうが、潮の加減によっては船を出す。すると世間の人とは生活スタイルがずれることも。そのことが偏見を生んだりしましたが、海に生きる人たちの豊かさも感じて欲しい・・・。 |

朔、初めてのみかんちぎり |
と、述べているときちんと信念を持って名付けたようだが、実は市役所に届け出をする直前まで妻と迷いに迷う。最終決断は市役所の駐車場。ちょっとしたことで息子は別の名前になっていたはず。おいおい。ちなみにもう一つの候補は「水人」(みなと)。水俣生まれってことで。どっちが良かったかな? |