熊本大学外川ゼミまち案内

辻もよぎ

六月二九日、熊本大学外川ゼミの先生と学生さん達十五名が水俣を訪れた。例年は泊まりがけで来ていただいていたが、今年は日帰りとなった。まず、到着した水俣駅の待合室の展示を見てもらう。水俣病に関する展示やパンフレットがほとんどないことは、水俣市民にとっての水俣病に対する意識の表れとも言える。駅を出てチッソ正門前で水俣市にとってのチッソの存在やかつての座り込みなどの説明、水俣病病名変更看板(※)も見て設置された経緯などを話した。駅の近くにある三笠屋で食事をとる。三笠屋はもともとチッソ工場での接待などで使われていた場所。その後、考証館を見学して吉永理巳子さんの講話を聞いた。考証館では、患者への差別の実態に衝撃を受ける学生さんが多かった。理巳子さんは講話で、情報が無い中で水俣病をずっと「嫌な病気」としか捉えられなかったが、もやい直しが始まって、「水俣の啓示」(色川大吉著)に出会ったことで考え方が大きく変わったこと、お父さんやお祖父さんの思いを伝えていこうと思うようになったというお話をされた。また、水俣病の病名変更についての質問には、「病名のために苦しんできた人もいる。いろんな立場の人が思いを明らかにして話し合うことが必要だと思います。」と答えられた。短い時間だったが、学生さん達は、自分の目と耳で水俣を感じ、水俣病事件を自分のこととして考えてくれたように感じた。
十月には熊本大学だけでなく、宮崎や大分大学との合同合宿を受け入れる。水俣や水俣病に対してどんな印象を抱くのか、どういったテーマで話し合うのかなど今から楽しみだ。

※今年の三月に個人所有地に立てられた看板。「メチル水銀中毒症へ 病名改正を求める!!水俣市民の会」と書かれている。

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