不知火患者会訴訟・熊本地裁所見(2010年3月15日)

平成17年(ワ)第1067号外 ノーモア・ミナマタ国家賠償等請求事件

所   見

当裁判所としては,本件和解協議を前進させ,本件訴訟の和解による最終的解決を実現するためには,本日,和解についての基本的な考えを示すことが相当であると判断するに至った。
よって,本件訴訟における審理の経過や和解協議において当事者双方から表明された意見等を踏まえて,下記のとおり,当裁判所の所見を提示する。

1 対象者の判定方法
(1)対象者の判定は,原告ら及び被告らが設置する「第三者委員会」において行う。
(2)判定資料は「共通診断書」と「第三者診断結果書」を用いる。
(3)第三者委員会の判定は,被告らから当裁判所に提出のあった「対象者の判定について」,「ばく露を受けた可能性のある者「対象地域」の関係について」,「昭和44年以降に生まれた者の敢扱いについて」及びこれらの補完資料による。
(4)以上のほか,判定に係る事項は,第三者委員会運営協薗会にお示て協議する。
2 支給内容
(1)一時金
ア 一時金対象者一人当たり210万円
イ 一時金は,被告チッソ株式会社が,本件訴訟原告団に一括して支給する。
(2)療養手当
ア(ア)入院による療養を受けた者       1月につき1万7700円
(イ)通院による療賽を受けた日数が1日以上の70歳以上の者 1月につき1万5900円
(ウ)通院による療養を受けた日数が1日以上の70歳未満の者 1月につき1万2900円
イ 療養手当は,被告国・両県(被告熊本県及び訴外鹿児島県)により設けられる療養手当支給制度によって,一時金等対象者に対して支給する。
(3)療養費
ア 自己負担分
イ 療養費は,被告国・両県(被告熊本県及び訴外鹿児島県)により設けられる水俣病被害者手帳制度により,一時金等対象者又は療養費対象者に対し,水俣病被害者手帳を交付することにより支給する。
(4)一時金に加算する金額
ア 29億5000万円
イ 一時金に加算する金額は,被告チッソ株式会社が,本件訴訟原告団に支給する。
3 その他の施策
被告国及び関係地方公共団体は,地域の振興,健康増進事業の実施,調査研究,一定の要件を満たす健康不安者に対する健康診査・保健指導の実施に努める。
4 責任とおわび
(1)被告チッソ株式会社は,責任とおわびの具体的な表明方法について検討する。
(2)被告国及び被告熊本県は,水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法前文に掲げる責任とおわびについて,再度深く受け止め,その具体的な表明方法について検討する。
5 紛争の解決
(1)原告ら及び被告らは,上記1の判定方法に従い,個別の原告の判定を行う。
(2)全ての原告について判定が終了したときには,原告ら及び被告らは,速やかに和解を成立させる。
(3)和解の成立により,被告チッソ株式会社による一時金の支払い等が行われる

とともに,原告らによるその余の請求の放棄,認定申請の敢下げ等が行われることにより,一切の紛争を解決する。
(4)原告ら及び被告らは,上記の解決措置を,年内を目途に終了するように努力する。

平成22年3月15日

熊本地方裁判所民事第2部
裁判長裁判官  高橋亮介
裁判宮 古市文孝
裁判官 植田裕紀久

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