水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法の「救済措置の方針」等についての考え方(環境省案)(2009年12月25日)

平成21年12月25日
環    境    省

水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法の

「救済措置の方針」等についての考え方(環境省案)

「水俣病被害者の救済及び水俣病問題の解決に関する特別措置法」の「救済措置の方針」などをどのような内容とするかについて、これまで環境省は、水俣病被 害者団体や関係県をはじめとする関係の方々からご意見を伺ってきました。頂戴したご意見を活かして、以下のとおり、現時点での環境省の考え方をとりまとめ ました。これを土台として、引き続き関係の方々のご意見をお伺いいたします。

1.救済措置

公害原因企業のチッ ソ・昭和電工の責任と、平成16年のいわゆる関西訴訟最高裁判所判決において公害防止政策が不十分であったと認められた国・熊本県の責任とを踏まえて、水 俣病被害者の方々をあたう限りすべて、また、迅速に救済します。このため、以下のような措置を行います。

 

(1)対象となる方

① 通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露(メチル水銀を体内に取り入れること)を受けた可能性がある方のうち、

(ア)四肢末梢優位の感覚障害(手足の先の方の感覚が鈍いこと)を有する方

に加え、(ア)にあたらない方であっても、

(イ)全身性の感覚障害を有する方その他の四肢末梢優位の感覚障害を有する方に準ずる方

とします。

 

② 通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性がある方とは、熊本県及び鹿児島県においては、昭和43年12月31日以前、新潟県においては、昭和40年12月31日以前に、

(ア)「対象地域」に相当の期間居住していたため、熊本県及び鹿児島県においては水俣湾又はその周辺水域の魚介類を、新潟県においては阿賀野川の魚介類を多食したと認められる方

に加え、上記と同様の年月日以前に、

(イ)「対象地域」に相当の期間居住していなかった方であっても、熊本県及び鹿児島県においては水俣湾又はその周辺水域の魚介類を、新潟県においては阿賀野川の魚介類を多食した(母体を経由する場合を含む)と認めるのに相当な理由がある方

とします。

③「対象地域」とは、そこに住む方が、通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性があり、水俣病患者が多発した地域として具体的に定める地域です。なお、この地域に相当の期間居住していなくても、②(イ)にあたる方は、①の症状があれば対象となります。

 

(2)対象となる方の判定方法

① 国及び関係県は、申請受付の広報を徹底し、救済措置を受ける必要がある方から、確実に申請していただけるよう努めます。救済措置の受付期間については、今後検討の上、定めます。

② 申請をした方は、関係県が指定する神紐内科のある公的病院(別に発表します)で検診を受けていただきます。

③ 関係県は、各県が設置する判定検討会の意見を聴いて、対象者を判定します。

④ 判定検討会における対象者についての判定は、公的病院の診断書と、申請者が提出する、別途定める要件に該当する医師の診断書(提出は任意)とを総合して行います。

⑤ 判定検討会においては、上記の公的病院の診断書のみでは四肢末梢優位の感覚障害などが認められない方で あっても、ご家族の中に既に患者となられた方などがいらっしゃるなど、メチル水銀の影響を受けた可能性が高い一定の要件を満たす方については、もう1回公 的病院の診断を受けていただき、その診断書の追加提出を受け付けることを今後検討します。

 

(3)支給内容

対象となることが決まった方は、下記の支給が受けられることとなります。

>一時金                金額については引き続き検討します

>療養費                医療費の自己負担分

>療養手当              金額については引き続き検討します

 

なお、一時金の支払い方法等については今後検討します。また、治療を受ける際の交通費負担が大きい離島地域の取扱いや、一時金のうち被害者の方々の団体を通じて支給するものについても今後検討します。

 

(注) この救済措置等は、これまで水俣病の被害に係る補償や救済を受けてこられなかった方を対象とします。 また、訴訟の提起や公害健康被害の補償等に関する法律の認定申請を行っている方は、そのまま続けることもできますし、これに代えてこの救済措置等の申請を 行うこともできます。

 

2.水俣病被害者手帳

 

一時金の対象となるような程度の感覚障害を有しないまでも、一定の感覚障害を有する方で、「こむらがえり」や「見える範囲が狭い」などの、水俣病にも見られる様々な症状を有する方々にも、水俣病被害者として安心して治療を受けていただけるようにします。

 

① 水俣病被害者手帳は、これを病院で提示すると医療費の自己負担が不要となる手帳です。交付を受ける方法は以下のとおりです。

② 保健手帳を持っている方については、救済措置の申請をせず水俣病被害者手帳の申請をした場合、1.(2)の判定を行わず、直ちに、水俣病被害者手帳を交付します。

なお、保健手帳の新規受付は、救済措置の方針の策定後は、終了することとなります。

③ 救済措置を申請した方については、1。(2)の判定を受けていた だく必要があります。水俣病被害者手帳は、通常起こり得る程度を超えるメチル水銀のばく露を受けた可能性がある方(1.(1)②の要件に該当する方)で あって、1.(2)の判定において、水俣病にも見られる神経症状を有すると認められる方に交付します。

 

3. 医療・福祉施策やもやい直し等に関する施策の実施

上記1.及び2.の措置を実施することに加えて、将来にわたって水俣病被害者などの方々が安心して暮らしていける社会を実現することが重要と考えています。このため水俣病発生地域における医療・福祉施策やもやし直しや健康調査等を適切に実施することとします。
これらの施策は、地元のニーズを適切に織り込んだ内容となるよう、引き続き、ご意見を伺い、以下のような内容を実施することを検討します。

 

(1)医療・福祉施策

高齢化が進む胎児性患者とその家族の方々などが安心して住み慣れた地域で暮らしていけるよう、必要な通所やショートステイ等の在宅支援サービスや医療との連携のあり方などの医療・福祉施策について検討しつつ、所要の取組を行います。

(2)もやい直し

水俣病に関する偏見・差別の解消と、水俣病問題で疲弊した地域の再生を図るため、地域社会の絆の修復、地域の再生・融和(もやい直し)についての所要の取組を行います。

(3)健康調査等

メチル水銀が人の健康に与える影響を把握するための調査研究(熊本・鹿児島においては昭和44年以降、新潟 においては昭和41年以降に出生した方々のうち、メチル水銀による汚染を受けたのではないかと心配されている方々の健康影響についての継続的な調査研 究)、高度な治療に関する調査研究、効果的な疫学調査(地域において、メチル水銀汚染と悪影響との関係を把握する調査)を行うためのその手法の開発などの 調査研究を進めます。

 

(4)国立水俣病総合研究センター

水俣病における医療・福祉や調査研究、国内外への情報発信等において中核となるような役割を適切に果たすこととします。

 

(5)環境モデル都市としての取組、その他の地域振興

水俣市などにおける環境に対する高い市民意識や蓄積された環境産業技術などを積極的に活かして、市民や企業による環境学習、自主的な環境活動も組み込みながら、環境負荷を少なくしつつ、経済発展する新しい形の地域づくりを積極的に進めます。

 

4.その他の事項

これらの措置の実施に当たり、原因企業がその責任を確実に果たせるようにするための関係県の措置に関しては、国としても適切な措置を講ずることとしたいと者えています。

 

以上の他、必要な事項があれば、これについて定めます。

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