2019年度活動報告

2020年5月31日開催 理事会報告

2019年度の報告の中でもっとも特筆すべきことは、来訪・来館者が急激に増えたことだろう。
前年度の考証館30周年記念で行ったクラウドファンディングによる宣伝効果や、同じく前年度に書籍の出版をしたことなどの効果が現れたと考えられる。ただし、なかでも大学関係の来訪者が極端に多かったのは予想を超えていた。夏季の大学のゼミ合宿などは、一度に3大学が集うことが複数回あった。以降、水俣病を伝える活動とあわせて、各大学との交流に力を入れることとなった。のちに機関紙で「なぜ私は『ともに』水俣へゆくのか?」という特集を企画し、相思社で合宿を行った各大学の担当教員に寄稿を依頼し思いを寄せてもらった。かねてより水俣まち案内の活動には伸びしろが多いと考えおり、この流れをもっと膨らませていこうと考えていたところに、年度末になって新型コロナウィルス禍が襲ってきた。来館、案内ともに軒並みキャンセルとなった。収束が早ければ、また来訪者が増えることも予想できたが、終わりが見えない場合、もう元のようには戻れないかもしれないという不安もあり、新たな課題を抱えたまま、年度末を迎えた。
続いて各事業について。患者連合事務局については、役員の方たちとのやり取り、イベントの計画と実施に関して丁寧に行った。4月に花見会、5月に鹿児島旅行、7月に決算、8月に監査、9 月に役員会を予定通り開催した。3月に、環境省・熊本県交渉を初めて水俣で行う予定だったが、コロナの影響から取りやめとなった。
下半期では、JICA研修(「水銀に関する水俣条約批准と実施に向けた能力強化」研修)がもっともボリュームのある仕事だった。今回で相思社が受託してから6回目だった。2019年度は、COP(条約締約国会議)が11月に実施されたので、例年は秋に実施するところを2020 年1月14日から2月14日までの日程で実施した。9カ国から11名が参加した。今回は水俣での滞在時間を確保するために、研修期間の終盤から修了式までを水俣で実施するというこれまでにないスケジュールを組みこんだ。概ね合理的だったと考えている。これで2度目の3カ年3回の受託が終わり、ひと区切りとなった。
今期で7年目の受託となる水俣病啓発事業の高校等訪問事業は、例年どおり20校で実施した。18年度から正式に始まり2回目となった「講師派遣授業型」(クラス数に応じて複数の講師が訪問し授業を担当する)訪問授業は3校で実施した。講師と生徒との距離感が近く、それぞれの実施校で好評だった。また、ここ数年新しい講師を探してきた。19年度は緒方俊一郎さんに地元の球磨工業高校で講師をしてもらった。ほかにも積極的に新しい講師を採用し、新たな協働体制を広げた。水俣病歴史考証館の運営では、開館30周年の改装・展示改訂を経てから最初に迎える年度だった。
また、前年の夏の酷暑の経験からエアコンを取り付けた。多額の投資に加え年間約15万円の電気代はかかるが、客の多い夏に良いコンディションで見学できることは、決して無駄ではなかった。パネルリニューアルの後半は10月にようやく終了した。19年度の入館者数は前年度を10%上回った。
「資料収集整理情報発信」に関しては、新たな資料や未整理資料の整理・入力作業を少しずつ進めた。特に写真資料については被写体の確認作業やデータベースへの入力・整理を進めた。12月には職員研修を兼ねて、理事の荒木洋子さんを相思社に招き職員とともに被写体人物の確認作業を行った。水俣病関連資料データベースについては長い間外部からのネット接続ができない状態だった。できるだけ多くの人に資料にアクセスし活用してもらうため、レンタルのOPAC(オンライン蔵書目録)サービスを利用することにした。4月1日より公開運用を開始し、好評を得ている。
機関紙「ごんずい」は、現会員に水俣・相思社への関心をひきとめ、活動状況を伝える重要な媒体であるだけでなく、これまで水俣病に関心が向かわなかったひとたち、接点が無かったひとたちを振り向かせるものでもある。ごんずい156号の特集「朝鮮半島と水俣」は、在日の人たちや植民地問題への関心層から反響があり、入会につながる人もいた。
物販に関しては、みかんの収穫減少が目立った。温州みかんと青島みかんはカメムシが発生したため農薬の使用を1 回許可したものの被害を受け、食害から腐れが多発して収量が減った。スイートスプリングは外観が悪くなりにくいという特徴があるが、今年は外観が悪いものが多かった。
雑柑は全体的に不作の品目が多かったため、自信をもって確実に販売できるネーブル、甘夏、パール柑の3品目のみ一般分の販売を行った。伊予柑としらぬひは生協のみ販売した。温度が高かった冬の影響で酸味が抜けるのが早く、お客さんからは「甘い」という反応が多かった。
りんごの販売については、年度から収量が不安定だったつがるの扱いを中止したため、つがるの売上分は落ちる予想だったが、他のりんごの売れ行きが好調だったため、全体の売上額は昨年度とあまり変わらずに済んだ。
会員の状況については、2018年度にみられたほどではなくなったが、新たに会員となる人が順調に増えていて、もうすぐ1000人に達しようとしている。会員になるきっかけは、来館や、講演会や水俣案内への参加者、書籍の読者、機関紙の年間購読などさまざまなようである。会員数は相思社の活動にたいしての直接的な評価の指標として今後も重視していくと同時に、会員ひとりひとりを大切にし、そのネットワークを強いものにしていきたい。
また2019年度は当局による引き締めの多い年度でもあった。労務局からは労務管理の監査が入り、労働時間管理の徹底と、「時間外・休日労働に関する協定届」(いわゆる36協定)の提出を指示された。これにより11月から日曜日の水俣病歴史考証館の開館時間を2時間縮小し、10時~16時とせざるを得なかった。一方、11月に八代年金事務所からも呼び出しが掛かり、厚生年金の加入を指示され、20年度途中からの加入を約束させられた。

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