2002年度 活動計画

2002年5月26日 理事会

はじめに
相思社は2004年度には設立30周年という節目を迎える。甘夏事件までを第一期相思社、2001年答申までを第二期相思社と位置づけるなら、2002年度から第三期相思社が本格的に動き出すことになる。
2001年答申は第一期相思社、第二期相思社の総括を経て、第三期相思社の活動の指針を示している。第三期相思社は第二期相思社までに明らかになってきた様々な矛盾、問題点を具体的に解決していくことによって、これからの相思社があるという考えが基本になっている。
今までの矛盾、問題点は活動内容と財政問題と組織形態に集約される。これらは単独の問題として存在するのではなく、相互に関連している。だから一つだけを改革するというわけにはいかない。
2002年度の職務分担は昨年度と大きく変わっている。これは今まで実態と離れた組織図であったのを実態に即したものに変更すると同時に、2001年答申に沿った活動を実施していくための組織図としたためである。
1989年答申以来の懸案の一つであった評議員会もその準備段階として、運営協議会といったものを2002年度理事会で検討し、2002年度中か遅くとも2003年度には立ち上げることになるだろう。
もう一つの、そして最大の課題は財政問題である。長年続けられてきた一律低賃金制は第一期相思社の活動と不可分のものであった。第二期相思社に入り、徐々に改善はされてきたものの、基本的には一律低賃金制を採用せざるを得なかった。そのことが徐々にネックとなり活動を阻害するようになってきた。第三期相思社を本格的に始めるためには、活動・組織・財政のすべての面を根本的に見直す必要がある。
新しい賃金体系を実施していくためには、次のような問題を解決していかなければならない。
1、新しい給与体系を採用するとなると、2002年度で約163万円の支出増になる。2003年度には更に約77万円あまり、2004年度には更に約75万円の支出増になる。現在の給与でさえ平均的に赤字が出ている状況であり、毎年多額の支出増に対応するためには、運営のあり方・考え方を抜本的に変革する必要がある。
2、相思社の財政状況が大幅に改善されないかぎり、将来的には正規職員は3名程度、それ以外は臨時職員で運営するような体制すら考えなければならなくなる。一律低賃金制から脱する以上、今まで以上に厳しい運営が必要とされる。163万円といえば相思社にとっては1人分の年間給与に相当するわけであり、7人の職員で今までの8人分以上の仕事をしなければならないことになる。つまり、労働強化が前提とならざるを得ない。
3、仕事の合理化、経費の削減、収入増への努力、などはもちろんのこと、場合によってはノルマを設定し、責任の所在を明確にするなどの対応が必要となる。

【事業部】

[水俣病を伝える]
昨年度までは[考証館・環境学習・グリーンツーリズム]と位置づけてきた事業だったが、それらの事業や手法の目的は「水俣病を伝える」ことである。そして伝えられた人々が考え始められるような仕掛けをしていくことが、この事業の内容となる。
水俣現地が持っている情報量は膨大なものがあり、それを言葉ではなく五感を通じて訪れた人々が会得できるように計らっていきたい。また情報発信という点からは、多彩な媒体(インターネット、紙資料、ビデオ、写真、メール等々)を用意することが必要となるだろう。
また仕事の組み立てを相思社職員だけで行うのではなく、周囲の人々を巻き込んだり、協力関係を作っていったりすることで、もやいネットワークの内実となるようにしていきたい。

〈考証館〉
来訪者にとって考証館は相思社への入り口である。第一印象が大切。例えわかりにくい場所にあっても、相思社へ行こうという来訪者への配慮が感じられるかどうかで、相思社の心意気が問われると言っても過言ではない。そこで2002年度は”来館者の立場に立って”考証館及び考証館までの道のりに設置している看板について、次のように取り組みたい。
①考証館までの道沿いにある看板の修理・新規の設置、相思社内の案内板の修理・設置をする。
②考証館の展示物の中には文字がはがれているもの、説明文の板が汚れているものなどがあるので整備する。漁具などもほこりを落としてきれいにする。
③パネルの配置・新設なども職員間で検討する。
④展示には常に手入れと工夫が欠かせない。身近にある民間の資料館をたずね、管理運営のノウハウを学び、考証館の運営に活かすことも積極的に取り組む。
⑤考証館の受付は「小展示室」という表示になっているが「売店・受付」という表示にする。

〈環境教育〉
この部門では、水俣病事件から学んだことを日々の暮らしに反映することができるよう、水俣を訪れる学校、団体、個人に対し、環境学習のプログラムを提供する。
2002年度は県内小学校に対し、体験を含めた学習プログラムの提案を行い、水俣での滞在時間を5時間以上取った計画づくりを促す。水俣の海に実際に触れる体験、考証館でのパネルや実物を前にした解説、水俣病関係者による話、ごみ減量に関する紙芝居や体験、自然と自分との関係に気づく体験など、これまで相思社が積み重ねてきたプログラムをHPやDMで学校に周知していく。プログラムに対応する料金設定を行う。
ごみ減量女性連絡会議、せっけん工場、地元の学校、浮浪雲工房などとの連携により、体験型のプログラムの充実を図る。
夏休みに教師向けごんずいのがっこうを企画する。県内、九州内を対象に、水俣病学習、総合的学習に対応できる内容とする。具体的には8月下旬に2泊3日で、学校向けに行う企画の体験、地元の教師との交流を組み込む。
また水俣病の教訓発信として、2002年2月世界湖沼会議NGO会議と3月の世界水会議のNGOプレ会議へ参加したこともあって、2003年の本番で行われるサテライト「子どもが育つ川(水系)と地域の再生を考える」NGO会議へ参加していきたい。水俣病を公害や環境からばかりでなく、地域の文化創造に役立てる活動として関わりたい。

〈教育旅行〉
水俣教育旅行誘致協議会は2001年度で解散した。仕事は新設される水俣観光協会に引き継がれる予定である。観光協会の事業が確定していないので分からない部分があるが、中学校・高校の教育旅行の誘致活動によってパイを大きくすることが期待される。相思社として観光協会の会員になるかどうか判断が必要である。以前の誘致協議会の活動は、直接的に相思社の案内増加となっているわけではない。しかし水俣地域でのネットワーク活動としては、情報交換や同じ体験などが可能になり有益な面もあるだろう。

〈案内〉
水俣案内はいくつかの事業と関連して成立しているが、ここでは案内を合理的に行っていくために、問題点や課題を整理するために新設した。
案内プログラムの充実(体験学習のメニュー作り&開発)、学校への営業、事前学習の提案およびツール(パンフレット、地図、聞き取り本、講議等)、案内料金の改定(コーディネート料金、患者の話への謝礼)などを、他の部門と共有の課題として取り組んでいく。

〈グリーンツーリズム〉
今年度の主催企画としては、湯の児台地の自然体験と作業を組み合わせたキャンプを8月、10月、12月、2月の週末に実施する。1泊2日で内容は道づくり、平坦地の整備、道づくり、カヌー、たき火等。宿泊は湯の児台地でのキャンプまたは相思社。吉井和久さん、柏木敏治さん、芦北振興局林務課などに作業指導等の協力要請をする。熊本県の森づくり基金を活用する。
また、にんじんクラブ、自然島等過去のグリーンツーリズム実施グループへ来訪の働きかけを行う。グリーンツーリズムのエリアに御所浦も入れた提案を行う。

〈出版〉
書籍販売のうちでも、自家出版物は収益も高く、一般には出回っていない種類なので確実に売れていくのでなるべくたくさんの種類を作成していきたい。また作成のために各地を調査したり、患者の所に出かけて行く活動を伴うことが相思社活動の基本ともなっていく。今年度は、患者聞き取り本第2集、水俣環不知火海調査報告、水俣歩きマップ(芦北、不知火海版も検討)などを作成する。
また2002年度からは小学校で、週5日制の導入と総合学習が始まったが、教師たちはその対応に苦慮しているので、水俣病の現地見学・事前学習等の教材セット(書籍、説明ツール、ビデオ、パンフレット等)を、総合学習対応として販売するようにしたい。
また環不知火海調査とも連動させて「不知火海の食卓(仮題)」を制作する。相思社職員・地元の人・風の人が、水俣・環不知火海の「食卓」で味わった食べ物と人のエピソードを綴った本またはCD-ROMを作りたい。「食卓」とは主に家庭料理を指す。グルメ本をつくるのが目的ではない。「食」という人が生きる上で欠くことのできない行為を切り口に、水俣・環不知火海で生きる人々の喜怒哀楽、そして素材そのものが活き活きとしている「食卓」を記録し伝えたい。構成は各著者の「忘れられないあの食卓」をエッセイ+レシピ+(できればカラーの)写真またはイラストで再現する。野菜・肉・魚というふうに項目を分けるのではなく、四季ごとに構成する。『ごんずい』に掲載した「食」関連の記事を使うことも考えられる。対象は水俣ファン、暮らしから水俣をみてみたい人。手頃な値段で、気軽に読め、水俣に行ってみたくなる、台所に立ちたくなる、そんな本にしたい。
2002年度は資料・材料の収集に努め、2003年の夏休み前にはできあがるようにしたい。

〈教材作成〉
毎年、公害学習・環境学習の一環として多くの小学校から水俣病歴史考証館見学・水俣病関連現地見学・水俣病患者語り部の話・自然体験学習などの依頼を受けている。春から夏の時期には社会見学旅行の下見で来訪する教師が後を絶たない。一方では、”水俣で何が起こり今はどうなっているのか”を小学生にわかりやすく伝える教材が十分にない状態がある。
相思社で既に作っている「絵で見る水俣病」(書籍)・「水俣病のしつもん箱」(ホームページ掲載)・「水俣環境学習の手引き」(パンフレット)などをもとに、授業ですぐに使えるオリジナル教材を作成し販売したい。教材の形式は冊子・OHPシート・CD-ROMなど使い易さを考えて適したものにする。水俣病歴史考証館売店に教材コーナーを設け、「水俣授業セット」として売り出せる状態にしたい。

〈大学生(卒論・ゼミ)〉
募集はホームページやごんずいを通じて行う。今年度中には資料データベースの公開も行う予定であり、そうなれば卒論等で相思社所蔵資料を使う学生も増えていくのではないかと思われる。

〈出張講演〉
要請があれば受けている。基本的に十分な謝礼がなくても、相思社の持ち出しにならなければ受けて、相思社、水俣病、水俣を伝える活動としていきたい。

[資料収集・整備・活用]
今年度から一般資料だけでなく、資金のめどがつけば新聞・年表の整備・活用にも力を入れていきたい。昨年水俣病情報センターが開館したが、資料収集・整理・情報発信については今年度から徐々に動き始めると思われる。相思社の資料活用にもつながることであり、できる範囲で情報センターに協力していきたい。
患者の話をビデオ収録し、保存するとともに、将来的には編集・販売し、水俣病を伝える事業に寄与できるものとしたい。

〈一般資料〉
1997年に本格的に資料のデータベース化を開始したが、2001年度末で約4万点が入力され、実用的なものになっている。1997年当初からデータベース公開を考えていたがようやく今年度中には情報センターを通じて公開していくめどが立った。データベースが公開されれば相思社所蔵資料は徐々に活用されていくものと思われる。特に大学生などからのアクセスが増えることが期待される。
1、例年行っている資料収集は継続する。
2、資料整理・データ入力も継続して作業を行う。国水研との契約も継続する。件数は年表整理作業とも関連するが、昨年と同じ程度の件数は確保したい。患者の個人資料、相思社の内部資料を除いても、未入力件数が4~5万点有り、毎年新規資料が2,000点程度増加していることもあり、少なくとも5,000点以上は整理・データベース化していく必要がある。
3、今年度中には情報センターを通じてデータベースを公開することになるだろう。できれば相思社独自でサーバーをもち、データベースを公開するとともに資料提供システムを本格的に動かしていきたい。
4、その他の課題
①将来的には資料及び資料データのデジタル化にも取り組みたい。
②水俣病関連年表の整備
③写真資料の整理、活用システムの構築
5、活動計画
①相思社の活動において入手した資料や送られてくる資料(主に紙資料)を点検し、水俣や水俣病に関する資料を収集する。
②新聞記事収集 熊日・西日本・朝日・読売・毎日新聞の記事から、水俣及び水俣病関係の記事をスクラップ保存する。
③水俣や水俣病に関するテレビやラジオの特集番組を収録する。
④その他、まとまった形の資料提供の申し出があれば、それも収集する。
⑤水俣病患者及び関係者からの聞き取りを実施する。
⑥資料を整理し、データを入力する。また、それを国水研に納品する(6,500点)

〈新聞〉
以前からの懸案であった新聞記事資料の整理・データベース化に取り組みたい。今年度地球環境基金に助成を申請しており、助成が認められれば費用のめどが立つので、3~5年を掛けて相思社所蔵の新聞記事資料を整理・データベース化していきたい。
データベース化されたものについては今年度中に公開し、その後は随時更新するようにしたい。
大阪人権博物館や水俣フォーラムへの新聞記事資料提供は継続していきたい。

〈年表〉
水俣病関連年表にも力を入れたい。まずは相思社所蔵の年表等をすべてデータベース化したい。その後、重複分を取り除いた年表を作り、重要なものを選び、表現を統一するなど「相思社水俣病年表」といったものを作成したい。
将来的には年表の項目と資料、あるいは新聞記事をリンクさせていきたい。
費用については今後の国水研・情報センターとの話し合いにもよるが、できれば上半期に企画を決め、契約をすませ、下半期には作業を開始したい。ただし、資料データベースの入力点数とも関連するので、場合によっては2003年度からの開始となるかも知れない。

[患者]
〈患者〉
「患者とのつき合い」を重視していきたい。
従来電話ですませていたことなども、できるかぎり出向いていって話をするようにしたい。秋の理事会が御所浦で予定されていることもあり、御所浦の患者とのつき合いを密にしていきたい。
1、患者運動をめぐる状況
97年1月から始まった患者連合・被害者の会・平和会の三団体による共同行動は今年度も継続されるだろう。従来と同様、統一申入書を作成し、環境省と場合によっては熊本・鹿児島両県、関係市町などへの申し入れを行うことになるだろう。
申し入れの主な目的は医療事業の継続・拡充だが、具体的には保健手帳の運用の改善を求めていくことになるだろう。他に、水俣病情報センターの拡充についても要望をすることになるだろう。
関西訴訟は国・熊本県が上告し、現在最高裁に係属しているが、訴訟自体に関しては当面動きはないだろう。支援者が中心となり「上告取り下げよう要望署名運動」を展開している。昨年4月の控訴審判決は行政責任の一部を認めた点においては原告側の勝訴といえるが、一審では認定された原告のうち2人が控訴審で棄却され、また一審の認容額を減額された原告も多く、原告にとっては手放しで喜べない状況があり、今後に課題を残している。
2、活動計画
①患者連合・患者連盟の事務局として、総会・世話人会・三団体共同行動・役員会などの手配や参加。会費徴収、会計作業などの日常業務の遂行。
②患者からの相談事があればなるべく出向いて対応する。
③「もやい直し」活動や水俣病の教訓を伝える活動に協力する。
④「患者とのつき合い」を重視して患者と話し合える機会を多く作る。

〈聞き取り調査〉
水俣病患者連合・チッソ水俣病患者連盟の方々をはじめ、機関誌「ごんずい」を中心に様々な立場の患者の方や水俣病に関わりを持つ方を取材し掲載してきた。近年、特に患者連合の方に語っていただいている。今年度は患者連盟の方へも積極的に取材をお願いしたいと考えている。地域・団体に偏りなく、あちらこちらの方に語っていただき、「ごんずい」や聞き取り本に掲載したい。

[調査研究]
〈湯の児台地〉
2001年春の理事会に提出した「環不知火海200年計画」に沿って、2002年度は平坦部から山頂にかけての整備事業に着手する。調査研究の湯の児台地担当で計画推進の事務局を担う。事業に必要な資金は、主に熊本県の県民参加の森林づくり助成、イオンの助成を申請してまかないたい。助成が認められなくても、相思社の予算の範囲での活動を予定している。
湯の児台地での事業は、人(相思社職員で掛かり切りになれる者・ボランティア・専門家など技術のある人)とかなりのパワー(熱意)が要る。そして、当面は活動から利益を生み出すことは難しい。このことを念頭に置き、相思社の活動の中で湯の児山のことをどう位置づけるのか、相思社の活動全体のなかで、仕事量をどのくらいの割合にするのかを考えなくてはならない。
2002年度の作業は、①平坦部の草刈り ②山道作り(草刈り)③山頂整備を予定している。①は、作業拠点となるのが平坦部であるので、草刈りをし、植生に合った木の苗を植え、テントを張れるよう居住性を作り出す。②は、素人でもできる獣道程度の山道を平坦部から山頂にかけて回す。③は、山頂の草払い、灌木切りをして眺望を確保する。シンボルツリーなど、メモリアルとしての空間のデザインを考える。専門家として吉井和久氏等に協力を要請する。①~③は、環不知火海の人と風土と暮らしに触れる楽しいイベントと一緒に毎年続けることが望ましいので、グリーンツーリズム企画とタイアップして参加者を募集する。

〈地域調査〉
相思社が地域調査を行うことは、相思社の地域との関わりをつくる、水俣病の影響をつかむ、環境学習のフィールドや講師を広げたり増やす、水俣の風土と暮らしを調べることによるいい地域づくりの実践に役立たせる、地域を再発見するまなざしを開発するなど、様々な意味を持つ。
今年度は獅子島での調査を予定している。獅子島は水俣病に対する偏見が強い地域であるが、生活史の聞き取り、あるもの探しから入っていきたいと考えている。
また、昨年に引き続き、水俣周辺地域の聞き取りとあるもの探しを地元学体験ツアー形式で8月上旬に実施する予定である。

〈助成事業〉
環境事業団に「水俣病関連新聞記事資料の収集と整理、データベース作成並びに情報発信」事業を申請した。申請が認められれば本格的に事業を開始する。一度申請が認められれば通常3年間は事業の継続が認められる。特別な事情があれば5年まで継続できることになっているので、事業が終了するまで申請を続けたい。
(湯の児台地)2002年度は、湯の児の森づくり、環境保全事業計画を作成し、熊本県の「県民参加の森林づくり事業」、「イオン」に助成申請する。

〈三重県自治会館組合研修〉
今年度もスリーステップ、リーダー研修が予定され、講師として要請されている。若干の収入となり、かつ環境活動や自然保護などで活動している人々とのネットワークを広げることになるので、積極的に受けていく。

〈きずなの里〉
今年度も芦北町きずなの里から委託を受ける予定。計画では20人分の聞き取りが終了した時点で、一冊の本に仕上げることになっている。

〈ISO〉
昨年からの課題であった相思社における環境マネジメントシステムの構築を行う。その際、IS014001への厳密な準拠にこだわらず、準用に留めたものも含めて考える。また、今後の組織運営で求められているさらなる経費節減に寄与したい。そうした上で、社会で広く取り組まれるようになった環境活動との連携を模索する。

[地域活動]
〈もやいネットワーク〉
2001年答申を受けて昨年度「地域活動」として位置づけていた活動を、受動的な関わりから積極的な関わりに転換するものとして、活動の方向性をもやい直しとした。人によってもやい直しの意味づけは相違しているが、とりあえず水俣病で起きた地域共同体の崩壊や市民と患者の対立等を、新たなコミュニティー創りに向かわせる働きかけとしたい。
また認識の共有を前提とする組織ではなく、考え方や手法は異なっているけれど同じような方向を向いている人々との関わりを、ネットワークと表現した。
すでになんらかの関わりのある、火のまつり実行委員会、寄ろ会みなまた、2001水俣ハイヤ節、ほっとはうす、本願の会、せっけん工場、在宅ケア研究会、元気村女性会議、ごみ減量女性連絡会、水俣案内人協会、おれんじ館、もやい館、きずなの里、水俣病資料館、国水研、情報センター等に対しては、水俣のもやいが促進されるように活動協力を行ったり、そうすることで相思社への信頼が高まるようにしたい。また湯の児台地開発や水俣環不知火海調査等で、協働で支えるネットワークを立ち上げることで相思社からのメッセージを発信していきたい。
すでにネットワークが進展している事業については、以下に記す。

・ごみ減量女性連絡会議
ごみ減量を進める活動を持続させるために、会のあり方について話し合いを持つ。将来的にはNPO法人化して、行政からごみ減量を仕事として委託されることが理想だが、まだそこまでの覚悟と足腰は伴っていない。2002年度は環境クリーンセンターと共に生ごみの資源化をテーマにしていくことが予想される。

・火のまつり実行委員会
全ての生命に祈りをささげる気持ちを、演出する企画を充実させることが問われている。中心は寄ろ会みなまたのメンバーであり、あまり水俣病と関わりなかった市民が、火のまつりを通じて年一回でも思いをはせることができるようになったことに意義がある。秋のお彼岸に開催することが定例化している。患者の参加をはかることも課題である。

・せっけん工場経営委員会
経営状態の改善のために、販売促進、新製品の開発を進める。相思社として、考証館でせっけん類を取り扱うほか、環境教育の場として提携を深める。

・水俣元気村女性会議
7月から3月まで、市中心部で会員による直売市を試みる。直売市を運営しながら、村とまちをつなげて地産地消を進め、元気村の栽培や販売の安全な基準作りをしていく。ここでの試みがやがて学校給食での地元産物の使用につながったり、水俣の安心安全な食べ物の基準になっていくことを構想している。

[物販・生産]
将来的には物販部門に代わって、「水俣病を伝える」活動から生まれる出版物やツール等の販売によって、収益と活動を一致させることを目指している。現状では相思社の物販は年々難しくなっているが、当面は物販の収益に代わるものはないので、仕事の改善をしながら対応していく。特にお茶はアイテムの増加によって、緑茶が減少するという悪循環に陥っている。独自サーバーとなりインターネットを通じて買い物ができるようになれば、販売物品の多様さは必要なので、とりあえず2002年度は現状を維持する。

〈蜜柑〉
2002年度は裏年なので、温州・青島(25トン)、雑柑(18トン)程度の販売量を目指したい。雑柑については、イヨカン・ハッサク・甘夏の8㎏規格を6㎏規格に変更することにより、販売価格も手頃になる。
本来ならば、例年表年に出張売り込みにいくが、生産者からも表裏に関係なく売り込みに行きたいとの要望もあり、9月に東北・北海道へ売り込みに行く予定。
今年は5月から7月頃にかけてカメムシ大量発生が予想されるため、初期防除が必要だろう。栽培方法、農薬使用規定については従来通りおこなう。
みかんの注文方法についても、従来のハガキ形式の他にFAXでも送信できる様式の注文書も取り入れる。出荷も基本的に週2回(月・水)とし、アルバイトは使用しない。

〈林檎〉
2002年度も4種類のりんごおよびりんごジュースを取り扱う。昨年、仕入れ価格と生産者の事務手数料の改定、紅玉の販売価格改定を行い、利益率を改善したので、今年は価格の改定は考えていない。しかし、天候不順で品薄が予想されるときは、価格の変更もあり得る。

〈お茶〉
例年通り、薄原の松本さんと、球磨郡相良村の宮崎さんの無農薬茶、石飛の天野さんの無農薬紅茶ほうじ茶を取り扱う。
昨年は売上が伸びなかったので、顧客の掘り起しをする。そのためにも離れた客への案内を出す。
また受注から発送にいたるまで時間をとられるので、作業方法等を改善する。
販売価格については据え置きとし、得意先への割引も従来どおり行い、2002年度の顧客の動向をみながら、2003年度の価格変更へとつなげる。
とにかく、2002年度は試行錯誤しながら、積極的にお茶の販売に取り組む。

〈書籍〉
考証館での販売は水俣・水俣病関連書籍やグッズの普及もさることながら、売り上げ向上も図る必要がある。来館者が思わず買いたくなるような商品陳列・装飾の工夫をしたい。また、何がどれだけ売れているのかを明確にし、売り方を工夫したい。

〈甘夏園〉
下草刈り・剪定・堆肥まきについては、外部委託とする。今年も約600㎏程度の収穫を見込んでいる。収穫は例年どおり職員全体作業とする。

【総務部】
[庶務]
〈一般庶務〉
庶務の仕事は相思社の運営が円滑に行え、無駄をなくし経費を削減することである。今年度は特に経費の大幅な節減に努力したい。
電話セット、コピー機などが、次々に耐用年数に達しているので、使えなくなった場合には、OA機器購入用の積立を取り崩して購入したい。
今年度は給与規程を含めさまざまな規程の変更が予定されており、変更された部分が円滑に行えるように特に気をつけたい。
昨年度、初めて県の監査を受けたが、その際に指示された事項に関して改善していきたい。

〈名簿管理〉
相思社の活動は様々な人々とのネットワークの中で意味を持ち、また財政的にも全国からの維持会費や寄付に支えられている。こうした活動の土台となり、これなくしては相思社の活動は一日たりとも立ち行かないと言っても過言でないものが、長年に渡り日々整備し活用してきた、総数1万6000人分に上る名簿である。物販の顧客名簿としての意味もある。

〈名簿管理システム〉
これまでも、名簿や会計の事務を手作業からパソコン処理へと移行し、省力化を図ってきた。しかし、特に名簿のシステムは10年程前にMS-DOS上のソフトで構築したものであり、最近のパソコンの著しい進歩を取り入れるためにシステムをWindows上へ移植することが数年来の大きな課題であったが、手をつけずにいた。10年かけて改良を加え長大になったプログラムを移し替えることは大変手間のかかることであるが、会計監査や昨年度初めて行われた県の立入検査でも組織の適正迅速な運営が求められており、この機会に、そうした運営に寄与できるよう事務処理のOAシステムを再構築することと合わせてWindows上への移植を行う。
具体的には、みかん・りんご・お茶・書籍等の物品販売はもちろん、考証館入館者数、書籍在庫など会計や名簿に関連するものを統合的に扱えるようなものを目指す。当面、2年を目途に実用化し、その後も実際に運用する中で改善をしていく。

[会計]
昨年度初めて、月度ごとに収支把握を行うようにしたが、OAシステムの再構築も関連することであり、早さと正確さの向上を図りたい。また、売掛金・仮払金・立替金などの早期回収ができるよう、規則の変更も含めて対応を行う。
県の監査で、法人税法上と行政指導上とで異なる公益事業と収益事業との区分を混同しているとの指摘を受けたので、会計士とも相談して改善する。具体的には、税務署提出のものと県提出のものとで事業区分を変えて書類作成を行う。

[管理・営繕]
草刈り・剪定については、従来通り外部委託とする。
2002年度は、大きな外注作業として、事務棟の床貼り替え、小展示室の大改修を考えている。その他に、畳もずいぶんと消耗しており畳替えが必要である。備品の購入に関しては、ファンヒーター・ストーブなど、すでに耐用年数に達している物については、買い換えたい。宿泊者が使えるように、電子レンジ・炊飯ジャー・ガスコンロなども購入したい。寝具についてもシーツ・枕も買い換えたい。

[寄付・維持会員]
寄付を直接増やす活動は難しいが、ごんずいで5月号と11月号ではボーナスカンパを呼びかける。維持会員については現状の維持会員の構成を調べる。どのような年齢層、相思社との関わりのきっかけと年数、相思社に期待すること等を調査項目とする。
また職員が使用する名刺の裏側に維持会員募集を刷り込む。理事・監事にもその名刺を使って貰う。理事・監事・職員は維持会員獲得を努力する。出会った人々をごんずい特別郵送者にした場合は、最初に送付する際に印刷物ばかりでなく一言肉筆を書き添えて送るようにする。
維持会員への特典は特製カレンダー、ごんずい送付、考証館入館無料、宿泊無料等継続する。
また郵便局を利用した自動引き落としを採用し、維持会員にお願いしている。

[機関誌編集]
一昔前はアメリカを中心とした資本主義経済システムによって、先進国による発展途上国の収奪が行われてきた。現在よく耳にするグローバリズムは、従来のシステムに代わって環境、人権、フェミニズム、健康などを新しい市場として組み込んでいる。90年代になって「人の幸せはモノの豊かさだけがじゃない」と気づく人が多くなったが、グローバリズムはそうした意識も組み込みつつ、相変わらずアメリカを中心とした先進国だけに富が集中する秩序は変わっていない。
日本の高度経済成長期に多くの人が所得倍増に浮かれていたが、同時に経済成長を支えていたチッソの起こした公害によって不知火海周辺の人々は苦しんでいたのだ。グローバリズムに浮かれてしまえば、同じような図式で私たちは同じ間違いを二度犯すことになる。
それ故グローバリズムに対してアンチではなく、水俣病の経験を芯として地域再生や生活文化創造を代案提示していきたい。だからまずグローバルの対極にローカルを置く。そうして地球環境ではなく足下の環境をしらべ、人権一般ではなく住んでいる地域のもやい創りとしての人権を考えたい。特に水俣では市町村合併を、もやい創りの観点から調べていく。

特集目次
●70号5月
特集:水俣というマチ
江口市長インタビュー/アクトB見学記/ワクワクするマチ水俣/患者インタビュー(ほっとはうす永本健二)
●71号7月
特集:リアスの山河(川漁師吉村勝徳)
患者インタビュー(横浦島)
●72号9月
特集:子供たちの水俣病(相思社に来た手紙、質問、ツアー等から)
●73号11月
第一特集:市町村合併について(南方熊楠の町村合併反対から-中沢新一。徳富蘇峰の自治論があるらしい、賛成・反対論、市町村合併の意味)
第二特集:ほっとはうす
患者インタビュー(女島浜田岩男さんの奥さん)
●74号2月
特集:「環境」は新たなフロンティアか?
(反植民地主義、反帝国主義の延長ではないグロ-バリズム批判)
高度経済成長とグローバリズム、先端技術とグローバリズム、ローカリズムの地元学から
●75号3月
特集:獅子島調査
患者インタビュー(出水 橋口三郎)

[ネットワーク・ボランティア]
水俣病を伝える活動としては、機関誌ごんずいを発行してきたが、発信としては一方通行であることがいなめない。水俣に心を寄せる人々との協働活動として、維持会員になってもらったり、ごんずいに投稿や意見やもらったり、それぞれの活動分野で出会い情報交換をしたり、そうした機会を積極的に創っていくことが、ネットワークを作り上げることにつながっていくと考えている。それらは直接収益とはならないけれど、それが水俣病を伝える活動になることで、新たな出会いや交流が生まれてくる。今年からは部門担当者をなるべく一人にしたが、それは相思社内でもまた外部でも活動を支えるネットワークを作って部門活動の基本としたいからである。
従来相思社ではボランティアについては、相思社の仕事を一部肩代わりしてくれるものとして考えてきた。しかし実際にはボランティアをそのように位置づけると、職員の労力に比べてボランティアの効果は薄く割に合わないモノになっていた。さらに世に言うボランティアとは、例えば相思社活動への理解を促進したり、ボランティアすることが楽しいような活動に限定されている。ボランティアを仕事の補助ではなく、広く水俣病を伝える活動の一環として考える方が適当ではないかと考えるようになった。
ボランティアを募る活動は当面、湯の児台地でも道作り等、水俣環不知火海調査で、一緒に体験することを目的に実施したい。またボランティアとは若干概念が異なるが、相思社の活動を体験するインターンシップなども実施してみたい。将来的には大学の単位になるようにしたい。

[職員研修]
昨年度、検討委員会より出された答申に沿って活動を具体化していくことを目的として、すでに職員研修を行っている。今年度新たに具体的方針に盛り込んだもやいネットワークの理念を固めることも目的の一つとして、さらに職員研修を行っていく。介護保険のような新しいことがらを学ぶためなど、必要に応じ外部からも講師を招き、一方、各自が年間1テーマを定め報告書を作成する自己研修を行う。

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