一生治らない病気

医者や支援者は、水俣病を「一生治らない病気」と表現したり、患者に「水俣病を治す薬はない」と伝えることが結構あります。

間違ってはいないし伝わり易い言葉で、私自身、患者の方への説明や講演会の時に使うことがあります。

先日40代の患者の方からのお電話で、「水俣病の手帳の申請をしたときに受けた検診で、お医者さんにしびれや耳鳴りや頭痛や手足のこわばりやけいれんはど うやったら治りますかって聞いたのよ。そしたら医者は‘水俣病は一生治りませんよ’って、軽く言うのよ」「もう他人事よ。俺、もう腹が立って腹が立っ て。これからどんな希望を持って生きればいいんだよ」。

ドキッとしました。その人が最後に言った「こんなに症状がある俺を棄却にした国と県にも、一生治らないと言った医者にも水銀を飲んでもらいたい」という言葉も。

もちろん医者の言い方も、受け取る側の精神状態もあるでしょうが、受けとる側によっては残酷な意味を持つこともある言葉です。
「水俣病」に限らず病気を受け入れるというのは本人や家族にとって大変なこと。そんな時に医者や支援者の発言が患者を傷付けたり病気の受容を妨げることがあるんだと知りました。

自分の使う言葉がどんな意味を持つのかを考えながら、人を傷付ける力も癒す力も持つ言葉を、「伝える」ときには心に留めておこうと思います。

そして「生きている」ということは、年齢や状態に関係なく平等に与えられたことで、生きるためには誰にでも希望が必要だと思ってます。

患者の方の話を聞いたり、水俣病の情報を伝えたり、ケアの方法を考えたりする中で、その人にとっての希望を、一緒に模索していきたいなと思います。

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