水俣病特措法の判定結果とそれが意味するもの

1 判定結果

(注)この表は2014年8月29日に、環境省が発表した表に、分析のために相思社が独自に保健手帳から一時金申請者した人数等を加えて作成したものである。したがって、環境省が正式に発表した以外の部分については多少の誤差はあるかも知れないが分析に影響はないと思われる。

2 判定結果から読み取れること

(1) 一時金の該当率が、一時金申請者の67%に上ったことは、保健手帳の所有者のうち、6割以上が被害者手帳に切り替えたことを考えると、思っていたより該当率が高かったといえるだろう(保健手帳該当者の人が一時金申請をしていれば、一時金の該当率はもっと高くなっていたと思われる)。

(2) ただ、1万7千人近くに及ぶ保健手帳からの切り替え者がうわさやデマに惑わされることなく一時金を申請していた場合、少なくともその70%以上(少なくとも1万2千人以上)が一時金の該当者になっていたと思われるので、そのことに悔いが残る(「あたう限り救済」にならなかった)。

(3) これら保健手帳から被害者手帳に切り替え申請した(16,824人)の大半は「一時金に申請すると医療費無料の手帳まで取り上げられる」といった差別デマに惑わされた人だと思われる。

(4) この人たちは普通に考えると「デマを信じた方が悪い」といえるだろうが、そのデマのかなりの部分が地方行政から発信されていた事実を考えると、一概に「だまされる方が悪い」といいきれない部分もあるだろう。

(5) 「切り替え者」の割合が、熊本(68%)・鹿児島(42%)・新潟(9%)と大きく異なっていることに注目したい。熊本と鹿児島とを比較すると数値が大きく異なっているのは、熊本県(特に水俣市)が水俣病に対する偏見・差別が強く、「デマ」が飛び交いやすい環境にあるからだと思われる。

(6) 新潟県の場合は、「切り替え者」の割合が熊本・鹿児島両県に比較すると極端に低いが、「保健手帳所有者数」の絶対数が熊本水俣病に比べて、極端に少ないこと(1.2%)自体を考察しなければならないだろう。

(7) 医療費だけの該当の人を含めた「全救済対象者」が85%に止まったことは「あたう限り救済」するといった、法の趣旨から考えると、少し低すぎるような気もするが、現段階では、対象地域外や対象年齢外の人で、救済対象者にはならないだろうことが分かっている人びとが数千人規模で申請したことを考えると、その結果も致し方ないのかという感じもするが、今後の課題でもあるだろう。

(8) 今回の特措法は、1995年の「政府解決策」の延長上に位置づけられるものであり、「政府解決策」の延長としては予想に反して、申請者・対象者の数的規模は大きかったといえる。一番の驚きはその点にある。
それは、水俣病の被害が当初の予想より大きかったという事もあるが、水俣病の「病像」の広がりと行政の対応の変化という要因も大きかったといわざるを得ないだろう。

(9) 水俣病の病像は初期(いわゆる旧認定)には劇症や典型症状だったのが、その後いわゆる新認定やその延長上に位置していた未認定の人たちのような不全形あるいは非典型症状の人たちを飛び超えて、今回は感覚障害のみの、それも従前のものと比べると不明確さを伴うものまで、救済の対象としているが、これは時代の流れ、というか、時代の状況を反映したものといえるだろう。

(10) 今回の特措法は「政府解決策」の延長上にあると前述したが、「患者救済ともやい直し」を車の両輪としたことも、特措法が政府解決策と同一線上にあると考えるゆえんである。というより、水俣病特措法の実施施策において、「もやい直し=地域づくり」を「政府解決策」当時より明確に打ち出していることは、行政の対応の変化ともども、時代の変化を強く印象づけることになっている。

(11) 今回も「(病像が変化していく以上)全被害者の救済はあり得ない」ということであるし、「もやい直し=地域づくり、が進まないことには被害者救済も進まない」ことが実証されたといえるだろう。

(12) 今後の水俣病の重要課題は「もやい創り」、「水俣病に対する偏見・差別の撤廃」だということが明らかになったと考えるべきだろう。

(13) とはいえ、向後に禍根を残さないためにも、「症状を自覚しながらも何らの救済対象とならかった救済非該当者」と「デマを信じて手帳の切り替え」という選択をした人たちにも、補償や救済といった側面ではなく、地域づくり・もやい創り、といった側面からの施策が必要だということだ。

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