田園調布オンラインまち案内

永野三智

田園調布学園の先生が一九九六年、石牟礼道子さんに「修学旅行で水俣へ行きたい」と相談したことがきっかけで、学習旅行が実現した。水俣にとっても初めての高校生の受け入れで、二〇〇人へ向けて、石牟礼さんと杉本栄子さんが講演し、相思社職員が五台のバスに分かれて乗車してまち案内をする、というコースが組まれた。二年後には石牟礼さんから原田正純医師に、そのあとを板井八重子医師、緒方俊一郎医師がつないでいる。杉本栄子さんのあとを生駒秀夫さんが長年に渡り続けて下さっていたが、体調を崩された昨年は、杉本肇さんがピンチヒッターを引き受けてくれた。
毎年、一年生の夏休みに「苦海浄土」を読み、二学期の授業で更に詳しく学ぶ生徒。今年はコロナ禍で旅行は実現しなかったが、先生方と相談の上、学校にいながら旅行を実現することになった。長崎と結び被爆者の声を聴き、水俣と結び患者や支援者の声を聴き、丸木美術館を訪れて原爆の図を観る三日間。小泉が考証館を解説、永野が百間排水溝と埋立地、茂道から案内。吉永理巳子さん、杉本肇さん、緒方俊一郎さんに講話をいただいた。さんざんリハーサルをしたにも関わらず、途中、音声が途切れる、画がストップするなどのトラブルがあったが、映像を流す、機材を予備のものに変える、マイクを取り替えるなど対応し、改善。
相思社総動員で臨んだオンラインまち案内。いつもは、慌ただしく水俣の中の何箇所も案内し、「対話の時間を」と心がけても、結局は時計に追われているが、深い学びの結果としての質問を聞きながら、来年からは皆さんの学びに、もっと心を馳せられるようになりたいと思った。
終了後、生徒さんたちには、生産者さんとの関係を大切に育てながら、こだわりの、おいしく安全な食べものを販売する「もじょか堂」×東京の自然食のお店「カフェスロー」に協力いただき、「水俣ランチ」を食べてもらった。語りの最後に五感を通じて水俣を、そして「食」を感じられる機会が、空間が学校内に生み出されたということが、ありがたく、うれしい。

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